平成23年度の研究においては、昨年度に引き続き、次の三点を研究の柱として人名典拠情報に関する研究調査を行った。具体的には、「(1)人物間の関係情報を検索するインターフェイスの提供<A-2>」、「(2)情報を追加・更新をできるインターフェイスの提供<B-1>」、「(3)Digital Cultural Heritage(以下DCH)において検索・資料のカテゴライズなどに活用するために、APIを通じてのDCHへの人名典拠情報の提供<B-2>」の三点である。本研究ではこれらの計画を実現すべ≦、(A)典拠サーバと(B)DCHの2つシステムを構築し、前者の(A)においては、典拠情報を更新・管理し、さらに二者を選択すると、各人物間の関係を参照できる機能を設けた。また後者の(B)については、人名典拠情報を活用することの可能な、皇族や華族などの写真や絵葉書などのデジタルデータを格納し、(A)に格納された典拠情報を、APIを通じてメタデータや電子付箋に人名情報を記録する機能を設けた。さらに(B)については、人物間の関係をグラフ化し、そこから各人物と該当する資料にアクセスできるような機能を実装した。そのことによって人物の「家」や、爵位などの「身分」などを一つのカテゴリーとして複数の資料にアクセスできるような機能を設けた。さらに関運研究として絵葉書などのメタデータのあり方の検討を行い、これらのメタデータの設計内容を(B)のDCHに反映した。これらの研究成果の主要部分は「皇族・華族を対象とする人名典拠情報の構築とDigital Cultural Heritageへの活用」などの論文にまとめられた。以上のような内容で構成された本研究は、日本では整備が遅れている歴史的な人名典拠情報の活用モデルを示す意義があった。その中でも特に、一か所に集約した典拠情報を、APIにより複数のDCHに配信し、活用するモデルを示すことで、典拠情報の具体的な配信方法と、配信された側の具体的な活用方法を示した。本実証実験で示したモデルは、今後の日本における人名典拠情報の具体的な整備方法と活用モデルの一つの指針を示す重要性を持っている。
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