研究課題/領域番号 |
22680024
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤井 哲 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20500367)
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キーワード | 振動 / 適応 / 粘菌 / モジュール / シグナル伝達 / ネットワーク / ライブセルイメージング / 自己組織化 |
研究概要 |
粘菌細胞が互いに集合する際に用いる誘因物質サイクリックAMP(cAMP)は、細胞外cAMPの刺激によって細胞内で新たに生成され、放出される。この応答が細胞間でそろい、振動と波となって伝播し、細胞が移動する向きをガイドしている。この発生機構について初年度にサイエンス誌に論文として発表したばかりであるが、特に1細胞レベルの応答と集団レベルでの応答の関係や、可視化することで得られた新知見についての歴史的観点からの位置づけを整理したものを、次年度に査読ありのレビュー論文として報告した。また、初年度特徴づけたcAMP応答の適応からの回復、「脱適応」の時間依存性、濃度依存性について、PHドメインタンパクCRACの膜への局在化を含めて位相応答曲線としての特徴づけをおこなった。またこれと並行して、cAMP受容体の変異株についても同様の可視化法によって生細胞イメージングによりcAMP応答を解析した。前者の性質は細胞間の同期のとりやすさと関係しており、現在その意義について解析している。後者は生化学的アッセイと含めて、応答の適応が受容体の変異によって異常を示すことが明らかになりつつあり、海外の共同研究者との共著論文を準備中である。さらに、CRACの膜への局在かの空間的な非一様性について、自由にはいまわっている状態の細胞における動態を解析し、これら自発的な状態遷移の周期性と適応がcAMP応答と同じ5-6分周期であることをつきとめた。理論的な解析については、相対的な濃度変化への応答を実現するための最低限のネットワークトポロジーについて議論し、統計推定されたモデルについても取り扱うことで、その性質の起源について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FRET計測を共焦点顕微鏡撮影できるよう、445nmレーザーの導入を年度当初に予定したいたが、震災の影響で予算が確定しなかったために、実験を先送りにした。また、計画当初の予想以上に微小流路系をもちいて刺激を厳密に与える系の確立が難航した。
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今後の研究の推進方策 |
受容体の変異体が示す振る舞いと、アクチン重合による影響が顕著であることから、これらに特に注目し、さらにその関係に焦点をあてて、詳しく解析する。また、適応的な振る舞いについては、海外のグループによって、別の系(大腸菌の走化性)において関連する研究が発表されたため、それとの相違点にも注意して、投稿論文としてまとめたい。
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