研究課題/領域番号 |
22680028
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
広津 崇亮 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70404035)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 線虫 / Ras-MAPK経路 / 嗅覚順応 / 嗅覚受容体 / RNAi / 神経可塑性 |
研究概要 |
1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定 嗅覚神経から直接シナプス入力を受ける介在神経のうち、AIY、AIA神経が順応に重要であり、AIZ、AIB神経は関与していないことを明らかにした。 2.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明 高濃度ジアセチルの受容体候補として得られたsri-14について重点的に解析を行った。sri-14がどの嗅覚神経で機能するかを明らかにするために、sri-14cDNAを作製し、sri-14変異体の嗅覚神経に特異的に発現させて機能回復実験を行った。その結果SRI-14はASH神経で働いていることがわかった。そこで、野生型とsri-14変異体のASH神経のジアセチルに対する応答をイメージングにより観察した。観察のために、カルシウム濃度のインジケーターをASHに発現させ、蛍光変化を微細に捉えることが可能なカメラを搭載したイメージングシステムを用いた。イメージング実験の結果、ASHが高濃度ジアセチルにのみ反応し、低濃度ジアセチルには反応しないこと、sri-14変異体ではASHがジアセチルに反応しないことを見出した。また既知のジアセチル受容体odr-10の変異体では、AWA嗅覚神経の低濃度ジアセチルへの反応が全く無くなり、ASHの高濃度ジアセチルへの反応は正常であることがわかった。これらの結果は、匂いの濃度によって嗅覚受容体が使い分けられていることを示唆している。 3.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御 嗅覚神経におけるRasの瞬時の不活性化が、嗅覚神経内のMAPKの働きにより制御されているかを確かめるために、AWC嗅覚神経特異的なMAPKのRNAiを行ってRasの活性をイメージングしたところ、素早い不活性化が阻害されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定、2.匂いシグナルのインプットの仕組みの解明、3. in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御、すべてのテーマについて当初の予定通りかそれ以上の順調な進展が見られた。特に、テーマ2、3については予想以上の進展が見られ、学術誌に論文を掲載し、新聞各紙に取り上げられた。研究が順調に進んだ結果、昨年度を上回る多くの学会発表を行うことができ、その多くが口頭発表であった(11回のうち、7回)。
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今後の研究の推進方策 |
すべてのテーマについて現在まで順調に進展していることから、これまでのやり方を推し進める方向で考えている。1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定については、イメージングシステムを駆使し中枢系順応が成立する時のAIY、AIA介在神経の反応を直接観察する。3. in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御については、さらに研究を進めて、Ras-MAPK経路が下流でどんな因子を制御しているのか生化学的手法を用いて解析を行う。さらに、Ras-MAPK経路は別の神経で線虫の行動を制御していることを見出したことから、Ras-MAPK経路が行動制御においてどのような働きをしているのかについても解析を進めて行く予定である。
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