1.中枢系嗅覚順応を制御する神経回路の同定:嗅覚順応に重要であることが示されたAIY、AIA神経について、順応成立前後で神経活性に変化が見られるかをカルシウムイメージングで調べた。その結果、AIY、AIA神経は通常の匂い刺激に対して活性化するが、順応成立後は活性化が有意に抑えられることが観察された。順応成立によって匂いシグナルの伝達経路が変化し、結果として行動変化が引き起こされることが示唆された。 2.網羅的RNAi法を用いた匂いシグナルのインプットの仕組みの解明:高濃度ジアセチルの受容体候補SRI-14が、嗅覚受容体として働いていることを示すために、本来sri-14が発現していない感覚神経に異所的に発現させた。すると、その感覚神経が高濃度ジアセチルに有意に強く応答するようになることが観察された。低濃度ジアセチルに対する応答には変化がなかった。これらの結果は、SRI-14が高濃度に限定したジアセチル受容体として機能するという結論を補完するものである。 3.in vivoライブイメージングによるRas-MAPK経路の活性の時空間的制御:Rasタンパク質の瞬時の活性変化が、嗅覚応答にとってどのような意味を持つのかを明らかにするために、Ras-MAPK経路の下流で働く因子の探索を行った。得られた候補因子については、AWC嗅覚神経特異的にRNAiを行って嗅覚応答への影響を調べた。その結果、陰イオンチャネルを含む複数の因子がAWC嗅覚神経で重要な機能をしていることが見出された。 4.中枢系順応に関わる新規分子の探索および機能の解析:中枢系順応に関わる新規分子の探索を行ったところ、翻訳制御因子、IP3経路の因子、mTOR経路の因子が候補として得られてきた。これらの候補の変異体は中枢系順応に著しい欠陥を示したことから、順応を制御する重要な因子として働くことが示唆される。
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