研究課題
神経系におけるシナプス形成機構の分子レベルの素過程として、神経系で発現する蛋白質の分子修飾と細胞内情報伝達系による制御が考えられる。本研究は、グルタミン酸作動性シナプスにおける興奮性シナプス形成の基本的な調節機構の解明を目指す。今年度は、哺乳類中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質受容体であるグルタミン酸受容体に関し、正常あるいは疾患状態にある中枢のシナプス形成に関わる関連分子の修飾と情報伝達機構を解析した。その結果、恒常的可塑性において、代謝型グルタミン酸受容体は、結合する即時型遺伝子産物Homer1およびその下流の情報伝達系を介し、イオンチャンネル型グルタミシ酸受容体(AMPA受容体)GluA2サブユニットをチロシン脱リン酸化する事により、AMPA受容体の局在と輸送過程を制御している事を明らかにした(Neuron 68,1128-4142(2010))。また、精神疾患の観点から、知的障害と自閉症原因に関わる精神疾患原因遺伝子Interleukin1-receptor accessory protein-like 1<IL1RAPL1)を介した情報伝達系の解析を行なった。そして、興奮性シナプス後膜側に局在する膜貫通型受容体であるIL1RAPL1の下流の情報伝達候補分子として、スパイン形態を規定するアクチン構造を制御するG蛋白質RhoAを活性化するRhoGEFのIL1RAPL1への会合およびRhoA下流のROCKキナーゼの存在を示唆する実験結果を得た。今後、IL1RAPL1がこれらの分子を介した情報伝達系により、様々な条件下で如何に興奮性シナプス形成を調節しているかについて解析を進める。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Neuron
巻: 68号 ページ: 1128-1142