高等動物にはミトコンドリアゲノム(mtDNA)が存在し、核ゲノムとは大きく異なる遺伝的特徴および遺伝様式である。mtDNAは、約16kbpの環状二本鎖DNAであり、細胞1個あたり1000-10000コピーもの多数のmtDNA分子を持つ。このため、ミトコンドリアゲノム遺伝には"量"の概念を前提とする必要がある。本研究では、"mtDNA量"に着目し、細胞あたりのmtDNAコピー数を制御している遺伝的・生理的・環境要因について、マウス個体を用いて探索・同定することを第一の目的とし、さらにこれらの遺伝子量がミトコンドリア活性、さらに生体に与える生理的影響を理解し、これらが関わる疾患ヘアプローチすることを第二の目的としている。本年度は、mtDNA量の相対定量法について条件検討を行った。またこの相対定量を用いて、mtDNA量についてマウス組織におけるmtDNA量を測定し基礎的なデータの取得を行った。さらにmtDNA量を制御する遺伝的因子を過剰発現するトランスジェニックマウスを用いて、ミトコンドリア活性に与える影響について個体レベルで解析を行った。その結果、このトランスジェニックマウスではmtDNA量が増加している様子が観察された。この系統では、変異型mtDNAをもつ個体で観察されるミトコンドリア活性低下や様々なミトコンドリア病の症状を改善する効果があることが示された。現在、mtDNA量を制御しうる他のトランスジェニックマウス系統の開発を試みている。
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