研究概要 |
卵管蠕動に伴う受精卵に負荷されるメカニカルストレス(MS)について、負荷されたMSとその細胞内応答を同時計測できるデバイスを目指して、シリコーンエラストマ-poly(dimethylsiloxane)(PDMS)製の厚さ0.1mmの薄膜を含むマイクロ流路と空気圧アクチュエータを組み込んだ卵管蠕動モデルとなる培養システムを開発した。図Aに示されるこのシステムを用いて、<1>マウス二細胞期から胚盤胞への発育評価、および<2>マウス胚盤胞の細胞内カルシウム濃度([Ca^2]_i)変化とその時に負荷されだMSを同時計測した。 <1>二細胞期から胚盤胞春の発育を、当システムを駆動して流路内の培地を動かした際(dynamic)とそうでない場合(static)と比較した。胚盤胞到達率においては駆動した培養区において有意に上昇した(dynamic,74%(n=126);static,62%(n=118);P<0.05)。胚盤胞内細胞数の平均についても有意に上昇した(dynamic,83±3(n=54);static,76±3(n=51)(P<0.05))。従って、マウス受精卵の最大移動速度が0.2mm/sとなる条件では、胚盤胞到達率および胚盤胞内細胞数が上昇することが確認された。 <2>当該システムを用いて、マウス胚盤胞におけるMSと[Ca^<2+>]_iについて同時評価した。[Ca^<2+>]_iを反映する蛍光色素Fluo-4AMを融解したマウス胚盤胞に添加し、マイクロ流路内に導入した。流路内で「回転」「並行移動」「圧縮」に伴うMSを負荷した状態の胚盤胞について共焦点蛍光顕微鏡観察を行った。受精卵が「回転」した際には最大蛍光強度変化は殆ど観察されなかった。40μm/sで「並行移動」する受精卵については、非常に短い時間であったが最大10%増加した。「圧縮」時の歪は約20%程度であり、応力-歪関係は25%程度までは線形に近似できることから、圧縮に伴う力は0.5-2.0μNと見積もられた。この際、共焦点撮影面内平均蛍光強度および蛍光強度の総和は10%程度増加した。従って、[Ca^<2+>]_iの変化は「並行移動」または「圧縮」が起こる際に観察された。
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