研究概要 |
1:近年の報告では、Transient receptor potential (TRP)チャネルが哺乳類細胞の機械受容チャネルとして機能しているとの報告がある。細胞膜の伸展に伴い、チャネルドメインが開く可能性が示唆されている (図2B)。他の報告されているマウス受精卵のMS応答機構について上記の可能性があるか検討するために、マウスの未受精卵および胚盤胞を蛍光抗体法によってTRPA1, TRPC1, 3, 5, 6, TRPM3, TRPP2, TRPV1, 2, 4の局在を調べた。その結果、胚盤胞の細胞膜上に数種のTRPチャネルの局在が示唆された。 2:ホールディングピペットで固定した受精卵内の各細胞を観察することに成功した。その結果、せん断応力の変化に伴い、マウス胚盤胞内の[Ca2+]iの上昇が観察された。一方、桑実胚または未受精卵ではこのような現象は観察されなかった。 3:ブタ受精卵の体外成熟および体外培養において、静置培養区に対する超音波照射区における胚盤胞到達率の上昇が観察された。1例だけであるがヒト受精卵においても同様の効果が得られている。振動培養装置(ネッパジーン㈱)を用いたマウス胚への効果と胚発生の機構を解明するための検討を行ったところ、振動培養における条件下では、2細胞期からの良好胚盤胞到達率および胚盤胞内細胞数に両区間で有意差は認められなかった。マイクロドロップ内の受精卵は振動負荷時には、振動・回転しながら移動することを確認した。振動培養ではMSと振動刺激の両方が負荷される。受精卵移動速度が著しく上昇したため、過度のせん断応力の影響があると考えている。 上記1-3の結果から、胚盤胞内の細胞にはメカニカルストレスを感知する機構が備わっていると考えられる。
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