研究課題
1)マイクロ流路構造と運動精子の向きの関連について検討した。用いた流路の断面は流路Aでは幅3 mm×高さ3 mm、流路Bでは幅0.17 mm×高さ3 mmであった。流路A内の精子運動方向は明視野顕微鏡を用いて評価し、流路B内の精子については共焦点蛍光顕微鏡を用いて観察した。流路Aを用いた際には遡上する精子割合は18%であり、流路Bを用いた場合には60%程度であった。全長0.05 mmの運動精子に流体から負荷されるせん断応力絶対値が流路Bでは大きく、流路Bではせん断応力が大きいために運動精子内に負荷されるモーメントが大きくなっている。その影響が流路AとBを用いた際の結果の違いに反映されたものと考えられる。精子鞭毛運動がせん断応力場の影響を受けることによって、精子が卵管内において卵管内流れの向きに逆らって移動すると考えられる。2)せん断応力負荷時において初期胚の細胞内カルシウム濃度変化([Ca2+]i)を計測することによって、負荷時の初期胚応答を評価した。ICRマウス桑実胚または胚盤胞を流路内に固定可能なマイクロ流体システムに入れた。保持ピペット内を陰圧にすることにより流路内に桑実胚または胚盤胞を固定した。流路にシリンジポンプを接続し培地流量0、20、200 microL/minの定常流によるせん断応力を負荷した。せん断応力負荷時の胚体積変化は桑実胚と胚盤胞で共に認められたが、桑実胚では特に細胞が透明体に圧縮されるような状態にまで細胞体積が増加した。せん断応力負荷時において、桑実胚では蛍光強度が上昇した細胞、および体積増加に伴う蛍光強度が低下した細胞が観察された。一方、胚盤胞では全体的に若干の[Ca2+]i上昇が観察された。胚盤胞と桑実胚では細胞の応答が異なることから、各受精卵のステージごとの受精卵内の構造がせん断応力負荷に伴う応答に関与していると想定される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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