研究課題
本研究では、ティッシュエンジニアリングの重要な課題である「毛細血管を含む三次元複合組織の再生」を実現するために生体外で再生した複数の組織を融合させる新しい研究手法を提案している。具体的には、マイクロ流体デバイスによって細胞外環境の間質流および細胞配置を時間的・空間的に制御した環境下で、多細胞のダイナミクス(細胞接着・遊走・走化性・形態形成)を最適化し、三次元複合肝組織に毛細血管を導入する(血管化)ことを目的とする。さらに、工学を基盤とした複合臓器再生のための新しい構成論的手法として展開するための研究基盤を確立することを目的とした。本年度は、マイクロ流体デバイスを用いて間質流を制御し、細胞の配置や形態形成を時間的・空間的に制御することで、細胞群が組織化し、血管化するために最適な条件を検討した。具体的には、以下の研究成果を得た。1.マイクロ流路のデザインを改良したマイクロ流体デバイスを用いて実験を行い、実験データ取得のハイスループット化を図った。2.マイクロ流体デバイスで培養する3種類の細胞群(肝細胞・毛細血管内皮細胞・星細胞)に関して、組織化を誘導するために最適な組み合わせを検討した。特に、星細胞が毛細血管形成プロセスにおいて血管内皮細胞の形態形成を安定化することを見出した。また、肝細胞組織の血管化を行う際に、血管内皮細胞との共培養プロセスを時間的に制御することが重要であることを見出した。3.培養液にTGFβを添加し、細胞間接着へ及ぼす影響と血管化プロセスに与える影響を定量的に解析した。4.タイムラプス顕微鏡システムで細胞動態を長時間観察し、血管ネットワークの細胞動態を定量的に解析した。5.マイクロ流体デバイスにおいて形成された三次元組織を各種マーカーで蛍光標識し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて毛細血管ネットワークと肝細胞組織の界面を中心に三次元構造を可視化した。
2: おおむね順調に進展している
これまでの実験成果により血管化のために重要な培養環境が徐々に明らかになってきているため。
本研究により三次元複合組織の再生に関するメカニズムが明らかになりつつあるが、実験デバイスのデザインや手法を工夫することで実験結果の再現性や効率についてさらに改善する必要がある。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (16件)
Biomaterials
巻: 33 ページ: 2693-2700
Lab on a Chip
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細胞
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