前年度の水和構造解析より、カチオン性ポリマーにおいて、たとえ同じ末端官能基を有していても自由水よりも早い緩和周波数を示す水(HMW)が存在する場合と、しない場合があることを見いだしているが、このHMWが存在しない場合に細胞毒性が低いことが示唆された。一方、遺伝子発現についてHMWとの相関性は現在のところ認められていない。 次に数種類のポリマーの合成、ナノ粒子の試作を行った。 親水性多糖に疎水性コレステロールを、酸性条件下において加水分解し得るビニルエーテル結合をリンカーとして用いて修飾した。この高分子はコレステロールを物理架橋点として自発的にナノメートルサイズの球状ゲルを形成した。このゲルは酸性条件にするとコレステロールのリンカー部分が加水分解し、ナノゲルは膨潤、さらに崩壊した。またこのナノゲル自身の細胞毒性は、使用する濃度領域において十分低いことが確認できた。また、カチオン性ポリ(L-リジン)を疎水基、さらにオリゴ糖のユニットにて修飾した。このポリマーから従来にない複構造を有し、かつマルチ応答性を示すナノサイズのゲルが調製できた。このナノゲルは、疎水性ユニットにより架橋点が形成され、主鎖のポリ(L-リジン)により中性-アルカリ性領域にてコンホメーションを変化させえた。さらに、オリゴ糖ユニットは酵素を用いて重合が可能でその重合によりナノゲルの表面電位をコントロールすることができた。 両性高分子電解質を両親媒性高分子との共重合体として合成した。両性電解質の双極子―双極子相互作用によりナノ~マイクロ粒子を自己組織的に形成した。さらに外力を加えることで、この相互作用に起因してユニークな動的変形能を示すことを見いだした。
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