本研究の目的は、運動制御システムを支える自律神経活動の機能的役割を解明することである。本年度は、自律神経活動の賦活が外乱立位時の制御則に及ぼす影響を検討した。自律神経活動を賦活する方法として、両手首を0度の冷水に2分間浸す冷却刺激を用いた。昨年度と同様に水の粘性の影響を取り除くため、36度の温水に両手首を浸す課題(温水刺激)も行った。立位中、足関節底屈筋群、足関節背屈筋群、膝関節伸展筋群、膝関節屈曲筋群、股関節伸展筋群、股関節外転筋群より表面筋電図を取得した。さらに、レーザー変位計により足関節角度、股関節角度を記録した。その結果、36度の温水刺激ではコントロール(両手首への刺激無し)条件と外乱時の関節角度変化および筋電図の振幅に変化は無かった。一方、冷却刺激により足関節角速度と股関節角速度が逆位相になる傾向が見られた。さらに、筋電図振幅を低次元化した解析により、股関節周りのモーメント生成する特異的な筋活動グループの存在を確認した。これら結果より、自律神経活動を賦活させると、外乱立位が安定することが明らかになった。さらに、その安定には、股関節の関節角速度および股関節モーメントを調節する神経制御則が関連していることが示唆された。
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