研究計画の提出時点で、南アフリカで予定していた「量的調査手法の習得」について、新たな知見の発見と研究協力者の都合により、隣国ジンバブエでの「量的調査の試行」に変更した。対象を変更したが、研究目的については変更を加えていない。 ジンバブエでは、ジンバブエ野球連盟が行う「野球普及を通じたHIV/AIDS啓蒙活動」に帯同してフィールドワークを行い、指導者、教員、活動の運営者などに対する質問紙調査を行い、加えて個別インタビューも実施した。その結果、行われている活動が、(1)ジンバブエの青少年のHIV/AIDSに関する知識の量には大きな個人差があること、(2)野球指導を通じたHIV/AIDS啓蒙が「身近な他者」によって行われるものであるため、対象者にとって受け入れやすいものとなっていること、(3)普及活動と同時進行することにより、常に新しい青少年が啓発活動に参加できること、(4)スポーツ普及の対象者が、年齢、性別などHIV/IAIDS啓発のターゲットグループとして最適なであること、などが明らかになった。 このことは、「野球とHIV/AIDS啓発」という結びつきが薄いと考えられるものが、地元の事情を良く理解した者のアイディアによって、大きな効果を生み出す新しい形の「スポーツを通じた開発」活動に転換されていることを示している。 質問紙を用いた量的調査の試行の際に、質問紙調査に関するワークショップを行ったが、予期せぬ要因によって事前に準備した調査紙は、改変を余儀なくされた。独自のプログラムの成果を検証するためには、量的調査を行う前提としての質的検証の重要であることが明らかになった。
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