研究課題/領域番号 |
22680048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 千あき 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40335401)
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キーワード | スポーツを通じた開発 / 社会開発 / 経済開発 / 青少年育成 / 貧困 / スポーツ |
研究概要 |
「スポーツを通じた開発と平和」のアジアの事例について、カンボジアとマレーシアを対象と定め、カンボジアについては、社会・経済開発、マレーシアについては、青少年育成の目的を持って行われた組織的なスポーツ活動について、その目的や実施に至った経緯、行われた活動の詳細などをフィールドワークを元に検証した。また、昨年度に日本国内のフィールドとして設定した「ホームレスワールドカップ日本代表」についても継続して調査を行い、貧困とスポーツの関係を探る糸口としての位置づけとした。 カンボジアでは、企業の連合体によって行われた活動が、行政と連携しており、その公共性や地域における定着度を担保していることが明らかになった。このことは、開発途上国において行われている一つの活動が、スポーツそのものの発展のみでなく、「スポーツを通じて」何らかの社会課題の解決に貢献することが重視される傾向にあることを示していた。 マレーシアの事例では、「駅伝」という日本発祥のスポーツが持ち込まれることにより、日本の経済発展の基盤の一つと捉えられている「チームワーク」の涵養が期待されていることが明らかになった。マレーシアでは、青少年の育成と経済開発を表裏一体と捉えており、政府の考えを体現するような地域住民の力の動員が見られた。カンボジアで見られた「民→官」の活動とは対極にある「官→民」への働きかけが考察された。 昨年からの継続課題の「ホームレスワールドカップ日本代表」の事例では、サッカーの国際大会の場が、参加した選手個人に活躍の場を与えると同時に、広く世界に貧困の撲滅を訴える機会とされている大会そのものの仕組みが明らかになった。また、参加した選手個人の成果から、大会やスポーツの持つ正の効果と同時に、「貧困」という課題に立ち向かう際のサッカーやスポーツの限界も考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・平成22年度に行った日本の事例について、調査結果をまとめる段階に入っており、共同研究者のカナダの事例についても同様である。これらの成果を活かして平成23年度の調査を行うことができた。 ・平成23年度に予定していた現地調査のうち、アジアについては2か国で達成できたが、大洋州については調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
・平成22年度、23年度に行った現地調査について、共同研究者と共に補足調査を行う。 ・最終目標としていた英語での論文、書籍の発表に関して、研究の開始当初から積極的に準備を進めたところ、予想以上に進捗した(英語書籍の編集担当【その中の数章の執筆を担当】を予定)。また、日本語書籍の執筆依頼も受けているため、速やかに研究をまとめる必要性が生じている。そのため、研究計画内で予定していた「大洋州での調査」を取り止め、アジア2か国(平成23年度に調査を実施したカンボジア、マレーシア)、アフリカ1か国(平成23年度に平成22年度の繰越課題として調査を実施したジンバブエ)、日本、カナダ(平成22年度に調査を実施)の事例に絞って補足調査を行い、研究成果を確実なものとすることに力を注ぎたい。
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