海外で行うフィールドワークに先駆けて、初年度は日本の事例(ホームレスワールドカップ日本代表の活動)と共同研究者が居住するカナダの事例(先住民族のスポーツ活動)を検証した。フィールドワークにおいて質的調査と量的調査の併用を試みたが、言語や調査期間、調査環境等の問題が明らかになり、次年度以降のフィールドワークにおいては質的調査のみを採用することとした。 2年目以降、カンボジアの事例(観光業サッカーリーグ【テーマ:社会開発】)、マレーシアの事例(マレーシア国際駅伝【テーマ:青少年教育】)、ジンバブエの事例(ジンバブエ野球連盟による野球普及活動【テーマ:HIV/AIDS啓発】)について、複数回にわたるフィールドワークを行い、その成果をまとめた。 本研究のテーマである「スポーツを通じた開発」は、分野としての歴史が浅く、国際的にも研究の蓄積が十分でないことが課題である。そのため、研究の開始当初に日本語、英語による研究成果の発表と、研究者・実務者間のネットワークの構築を目標に定めていた。5つの事例のフィールドワークから、開発分野において期待された「スポーツ」の複数の役割や機能が明らかになり、これらの成果を一般書、専門書にまとめた。書籍の出版に際し、さらに他の多くの事例について、国内外の研究者、実務者から寄稿もしていただいた。 研究会や国際シンポジウムも開催したことから、事例研究の成果を公表すると共に、日本国内における関係者のネットワークが構築に寄与することができたと考えている。
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