研究課題/領域番号 |
22680053
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 浩範 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究, 助教 (60314861)
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キーワード | リン酸 / 遺伝子発現 / 臓器間ネットワーク / 生活習慣病 / オミックス医療 |
研究概要 |
本研究では、新たな栄養センサーの発見と生活習慣病予防・治療法の開発を目的とし、臓器特異的なリン感受性遺伝子群および代謝産物の同定を試みている。これまでに我々は、腸管リンセンサーとして癌ストレス制御因子NF-E2-related factor 2 (Nrf2)を同定し、Nrf2欠損マウスを用いて、食事性リンによる解毒調節作用が消失することを確認した。本年度、リン摂取バランスは、炎症性腸疾患や敗血症の病態重症度に影響を与えることを見出した。さらに、腸管リン吸収や腎臓でのビタミシD産生には、サーカディアンリズムが存在し、ナトリウム依存性リン輸送担体Npt2bおよび活性型ビタミンD合成酵素CYP27b1が、その標的分子であることを明らかにした。興味深いことに、腎臓でのCYP27b1発現の日内リズムは、リン欠乏時においては消失することが明らかになった。実際、リン摂取バランスは、(Clock,BMAL1,Per2)の肝臓および腸管での発現を変化させることから、時計遺伝子がリンセンサーとして機能している可能性が考えられる。また、リン、カルシウム、ビタミンD代謝異常を有する早期老化モデルマウス(klotho変異マウス)を用いて、腎、心筋および大動脈での異所性石灰化発症に、カルシウム・リン調節ホルモンのスタニオカルシン2が防御的因子として寄与する可能性を明らかにした(BONE2012)。これらのことから、Nrf2や時計遺伝子、スタニオカルシン2は、リンセンサ「として腸管解毒や炎症反応、ビタミンD代謝を調節することが示唆され、リン摂取バランスを考慮した生活習慣病予防・治療法を確立するためには、リンやビタミンD代謝の日内リズムを応用したことが重要であると考えられる。本研究成果は、時間栄養学を考慮した新たな疾患予防法の開発の基盤研究として意義があり、今後、腎疾患、骨代謝疾患、炎症疾患モデルを活用し、リン摂取バランスと疾患発症、体内時計との関係を明らかにすることで、詳細な栄養素シグナル経路および生体リン臓器間ネットワークを解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの2年間の研究から、新たなリン感受性遺伝子の同定に成功し、また、腎疾患、動脈硬化や炎症疾患発症予防にリン摂取量が関与することを明らかにしている。得られた研究成果を国内外での学会発表および国際級論文として発表している。以上のことから、本研究の目的の達成度として、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、研究計画の変更は特になく、リンセンサー分子群を標的とした疾唐発症・進展の予防法の開発として、疾患モデル動物としてアデニン誘導性腎不全ラットおよびミネラル代謝異常モデル(Klotho変異マウス)を用い、日内変動、体内時計およびリン摂取の関係を分子生物学研究手法により明らかにすることで、時間栄養学を考慮したリン摂取バランスによる疾患予防法を確立する。
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