研究概要 |
本研究では、ブロモドメインタンパク質Brd4の代謝性疾患の発症進展機構を解明するために、Brd4 siRNAを用いた細胞実験を行なった。Brd4 siRNA発現脂肪細胞およびcontrol siRNA発現脂肪細胞を用いて、マイクロアレイ解析を行った。その結果、脂質の蓄積に関与する多くの遺伝子(約60個 例Acsl1, Dgat2, GLUT5, Gpd1など)および、それら活性を調節する転写因子(PPARγ2、LXRα、SREBP1、Spot14)の発現が、Brd4 siRNA発現脂肪細胞において、control siRNA発現脂肪細胞と比較して低いことが明らかとなった。さらに、これらの遺伝子周辺のBrd4の結合をクロマチン免疫沈降法によって調べてみると、Brd4 siRNA発現脂肪細胞では顕著に低下していた。さらに、これら遺伝子の発現低下は、離乳期のBrd4ヘテロ欠損マウスにおいても観察された。 ヒト小腸様Caco-2細胞にBrd4 siRNAおよびcontrol siRNAが発現する細胞株を樹立し、小腸の遺伝子発現が変動するかを調べる試みを行なった。その結果、小腸様に分化するコンフレント10日後においてデンプン、スクロースの分解に関与する二糖類水解酵素スクラーゼ・イソマルターゼSIの遺伝子発現がBrd4 siRNAによって顕著に低下する結果が明らかとなった。 さらに、ヒト正常細胞でBrd4の役割を調べるために、ヒト脂肪培養細胞の樹立をiPS細胞を用いて行なった。その結果、ヒトiPS細胞に脂肪細胞分化誘導試薬を添加すると、脂肪細胞特異的でBrd4標的遺伝子であるアディポネクチンの発現増加が観察された。
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