本研究では,河跡湖の堆積物および地形の解析にもとづき,10~1000年スケールでの河川中・下流域の環境変化を明らかにしていく.現地調査は,蛇行流路が日本でもっともよく発達し,多くの河跡湖がみられる石狩平野で実施した. 今年度は4つの河跡湖(菱沼,月沼,ピラ沼,トイ沼)において採取したコア堆積物の解析を進めた.137Cs測定結果から1963年に堆積した地層の位置を推定した.月沼およびトイ沼ではテフラを確認し,1739年のTa-a火山灰に対比されると考えられる.放射性炭素年代の測定結果にもとづき,河跡湖の形成時期が新しいこと,河道から切り離された直後に急速に埋積される傾向がみられることを推定した.さらに,堆積物の特性(粒度や強熱減量,かさ密度,帯磁率)と気象観測記録(降水量)との関係を検討した. 石狩川周辺の氾濫原においてハンドオーガーを用いて表層堆積物を採取した.堆積物の放射性炭素年代測定をおこなった結果,泥炭層とその下位にみられるシルト・粘土層との境界が約4000-5000 cal BPであることを明らかにした.泥炭層の形成が活発化した時期は,後氷期の海水準上昇の減速や終了,気候変動と関連している可能性が高いと考えられる. 初年度に氾濫原で採取したコア堆積物の解析結果を投稿し,学術誌への掲載が決定した.また,三日月湖堆積物の粒度変化と降水量との関係や氾濫原の堆積速度と泥炭形成,湖盆図作成手法について国内学会および国際学会で発表した.
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