本年度は、独自に開発した糖鎖構造変化の網羅的定量分析技術であるIGEL法のハイスループット化、プロトコルの至適化を行い、さらに血漿サンプルを使用したバイオマーカースクリーニングを開始した。 まずIGEL法に用いることができる市販のレクチンアガロースビーズと、それによってモニターできる糖鎖構造の種類を、LC/MS/MS分析にて確定した。その結果、ConA、SSA、LCA、SNA-Iレクチンを固相化したビーズにおいて、血漿由来糖ペプチド回収率が再現性を持って90%を超える十分な特異性、親和性を示したため、これらを糖鎖標的バイオマーカー探索に使用することとした。これによって、個々の血漿糖タンパク質上糖鎖付加部位に対するハイマンノース型、α2-6シアル酸、α1-6フコースの付加頻度変動が定量的、かつ網羅的に分析可能となった。 また、100症例を超える多検体をスクリーニング、バリデーションで用いるために、ハイスループットでサンプル間再現性の高い質量分析前処理システムの構築が必須であった。この目的のために、株式会社ライフテックと共同開発で96ウェルプレートを使用したIGEL精製ロボットを製作した。既存の機器にはない、96連フィルトレーションシリンジを搭載した本ロボットの開発によって、96症例の血漿サンプルを一度にIGEL精製可能となり、データの再現性、スループットを大幅に向上させることに成功した。 ここまでで本年度の研究実施計画書記載の目的は達成できたが、これらが予定よりも迅速に完了したため、150症例の血漿と、上記IGEL法に基づく前処理を使用して早期肺癌バイオマーカーの探索を開始し、継続中である。
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