研究概要 |
平成24年度は、主に琵琶湖を対象としたフィールド調査、および平成22-24年度の成果報告に取り組んだ。フィールド調査では、とくに貧酸素環境下でのマンガン・ヒ素溶出の数値モデル化を念頭に、京都大学生態学研究センターの強力の下、北湖7地点における間隙水調査を実施した。この結果を基に、底泥から湖底水へのマンガン・ヒ素の鉛直拡散フラックスを算出した。その結果、湖底全体に分布する表面酸化層が貧酸素化の著しい最深部付近で消失していること、酸化層が薄い地点ほど湖水への拡散溶出フラックスが大きいことが明らかになった(投稿準備中)。この結果は、今後貧酸素化が進行すると、湖内の広い範囲で湖底水中マンガン・ヒ素濃度が上昇することを示唆している。 成果報告に関しては、主要な研究成果を以下4報の論文として国際学術紙に投稿し、全て受理された。1. 2007年に琵琶湖湖底で大量斃死が発見された固有種イサザについて、体内の微量元素濃度を測定し、死亡個体から著しく高濃度のMn・Asを検出した。(Hirata et al., 2011, Environ. Poll.) 2. 上記死亡個体について、生前の暴露であることを確認するため、死亡個体への吸着実験、死亡個体体内のMn・Asの形態分析(XAFS)、湖底堆積物・湖底水の化学分析を実施し、生前に暴露した可能性が高いことを示した。(Itai et al., 2012, ES&T) 3. Mn・Asが表層に著しく濃縮していること(Hyobu et al., 2012, Interdis. Studies Environ. Chem.)、この濃縮量が1977年と比較して大幅に上昇していること(Itai et al., 2012, Geochem. J.)を明らかにした。
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