研究課題
本研究の目的は、生態系の「いつ」吸収された炭素が「どの部分に」「どれだけ」蓄えられているかについての知見を加えた炭素動態を、炭素安定同位体比を用いて明らかにする手法を確立することである。そのために、本年度は、大気サンプリング装置や呼吸量測定チャンバーなどのシステム開発を行った。土壌から放出される二酸化炭素の安定同位体比を測定するためのチャンバーは、空気圧を利用した自動開閉式とし、長期間連続的にかつなるべく自然条件下に近い環境で測定できる物とした。大気サンプリング装置は、容易に分解・組立が行えるようにし、様々な高度の観測タワーに対応できる物とした。これらの装置から吸引された大気はリレーコントローラによって制御された電磁弁によって、自動的に順次、キャビティリングダウン(CRDS)方式のレーザー二酸化炭素安定同位体分析装置に導入され、測定される。また、開発中の安定同位体微気象群落多層モデルの検証のため、独)森林総合研究所富士吉田試験地(冷温帯アカマツ林)において、名古屋大学や独)海洋研究開発機構の研究者らと共同し、名古屋大学所有の量子カスケードレーザーを用いた高精度レーザー二酸化炭素安定同位体比測定装置を利用して炭素・酸素・安定同位体比の連続観測を行った。その結果、樹冠上では日中には同位体比が高く、夜間に低い様子が観測され、樹冠内では林床に近づくにつれ同位体比が低い様子が観測された。微気象群落多層モデルによって、森林内の大気二酸化炭素の炭素安定同位体比を計算することができ、その再現計算結果は観測値とも一致していた。
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