研究課題
森林生態系は最も複雑な生態系であり、不確定性を減少させるには大気と生態系との炭素交換量を測定するだけでは不十分であり、同時に、生態系内部の炭素動態を把握することによって、より正確な陸上生態系炭素交換量を算定することができる。安定同位体を用いることによって、呼吸による放出起源の推定や水利用効率の推定など、通常の大気観測では得られない情報を得ることができる。従来の質量分析計では行えなかった野外での大気13CO2測定を行うために、CRDS(キャビティリングダウン方式)レーザー分析計の森林での観測可能性を検証した。はじめに、測定精度を確認するため、二酸化炭素が充填されたシリンダーを測定し、アラン分散を算出した。その結果、15~20分程度の積算時間で最も精度がよく、その精度は1000秒積算で0.08‰(715ppm)~0.18‰(389ppm)程度であった。富士吉田アカマツ林サイトにおいて、^<13>CO_2鉛直プロファイル観測、自動開閉チャンバーを用いた土壌および葉からの^<13>CO_2フラックス観測を2011年7月から12月まで行った。2011年11月1日から光合成による分別を測定するために、枝チャンバーを取り付けた。林内鉛直プロファイル観測からはCO_2の濃度上昇と共にδ^<13>Cが減少する日変動を捉えることができた。土壌チャンバーによって測定したδ^<13>Cのデータから、キーリングプロットによる土壌炭素ソースの同位体比推定を行った。クローズドチャンバーによるキーリングプロットによる解析は、(そもそも前提が成り立たない面もあり)精度的に難しく、特に、CO_2フラックスの小さくなる冬季には非常に難しいことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
初年度には分析機械の納入の遅れなどにより、やや研究が滞ったが、本年度前半には分析機械の精度検証を行い、当初の計画通り、観測システムを完成させ、冷温帯針葉樹林で7月から12月まで観測を行うことができた。
今後、別の生態系にて二酸化炭素安定同位体比の観測を行い、冷温帯針葉樹林での観測結果と比較解析を行う。また、当初の計画よりもレーザー分光計の精度の維持管理が手間がかかるため、キャリブレーションの方法や装置について深く検討する。
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