研究課題/領域番号 |
22681006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
酒井 恒 神戸大学, 自然科学系先端融合研究環・バイオシグナル研究センター, 助教 (70526251)
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キーワード | DNA損傷応答 / ファンコニ貧血 / FANCD2 / アポトーシス |
研究概要 |
申請者は前年度までにファンコニ貧血原因遺伝子産物の一つであるFANCD2が重度のDNA損傷ストレスに応答して、カスパーゼ3依存的に切断されることを見出し、そのうちの3か所の切断部位を同定した。今年度は、さらに残りの1ヶ所の切断部位を同定し、FANCD2は合計4ヶ所で切断されることを見出した。また、同定した部位の全てに突然変異を導入する事によって、カスパーゼによる切断に対して完全に抵抗性を示す「非切断型FANCD2」を作成し、これを安定発現する細胞株を、FANCD2欠損細胞を用いて樹立した。その細胞を用いてDNA損傷ストレスに対する応答を解析したところ、野生型FANCD2を発現する細胞よりも、DNA損傷ストレスに対してより抵抗性を示す事が見出された。また、同様の細胞を用いてアポトーシス誘導についても解析したところ、野生型FANCD2を発現する細胞に比べて、アポトーシス誘導が遅延する事も判明した。一方、核内で機能するFANCD2が切断されることによる細胞への影響を調べるため、FANCD2の最もC末端側に位置するカスパーゼ切断部位に終止コドンを導入し、カスパーゼ切断を擬したC末端欠損FANCD2を安定発現する細胞株を樹立した。しかし、この変異型FANCD2は核内での発現が認められず、その影響を見るに至らなかった。そのため、核内で機能的なFANCD2を任意のタイミングで切断可能にするために、TEVプロテアーゼ切断モチーフを上述の非切断型FANCD2に導入した新たな変異型FANCD2を安定発現する細胞株を樹立した。この細胞は、野生型FANCD2発現細胞と同程度のマイトマイシンC抵抗性を示し、核内で機能的であることが確認された。現在は、DNA損傷ストレスのない条件下で、TEVプロテアーゼによってFANCD2を切断した時の細胞への影響を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カスパーゼ3によるFANCD2切断部位全4ヶ所の同定や、非切断型FANCD2導入による細胞への影響の解析など、おおむね研究計画通りに解析は進行しており、重度のDNA損傷に応答したFANCD2の新たな翻訳後制御が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に記載されている通り、重度のDNA損傷ストレス下でのFANCD2との相互作用因子の探索など、FANCD2とアポトーシスとの関わりを中心に解析を進めて行く予定である。また変更点としては、上述したように、C末端欠損FANCD2を核内で発現する細胞の樹立ができず、カスパーゼによるFANCD2切断の細胞への影響を調べることができなかったため、対応策として、核内で機能的なFANCD2を任意のタイミングで切断可能する新たな系の樹立を行っている。
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