本研究では、環境化学物質(ダイオキシンなど)の曝露によるin vivoでの表現型がどの時期に作用し、どの作用点・メカニズムに基づくものかの解明を目指している。さらに環境化学物質の脳発達影響へのin vitroでの代替実験法・スクリーニング法の確立に先立つ成果となることを念頭に研究を進めている。平成22年度においては、作用時期の特定のため、in vivoでの環境化学物質の曝露時期に合わせたタイミングで回収したマウス脳を用いて初代神経培養を開始した。全培養期間中、前半、後半、全期間に期間を分け、様々な濃度でダイオキシン曝露を行い、定量性PCRを用いて神経細胞およびグリア細胞に関連する遺伝子のmRNAの発現を解析した。その結果、前半曝露によるグリア細胞分泌タンパクの発現の減少を認めた。加えて、曝露時期に関わらず細胞接着因子の発現の減少を認めた。以上のことから曝露時期の違いにより影響を及ぼす細胞および分子が異なるであろうことが示唆された。 作用点の解明について、ダイオキシン受容体AhRノックアウトマウスを用いて曝露実験および行動影響評価を進めており、野生型マウスとの違いについて比較を行い、AhRが脳発達および行動に影響を及ぼすかについて検証を行う予定である。 さらに、ダイオキシン曝露影響と並行して、ビスフェノールAの胎児期曝露による行動への影響についてもIntelliCageを用いて検証した。その結果、BPA胎児期曝露群において衝動性を示唆する行動異常が認められた。また、発達期の脳を採取し、発達期における種々の神経関連遺伝子の発現解析を行ったところ、細胞骨格関連タンパクのタンパク量の減少を認めた。
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