本研究では、環境化学物質(ダイオキシンなど)の曝露によるin vivoでの表現型がどの時期に作用し、どの作用点・メカニズムに基 づくものかの解明を目指している。さらに、環境化学物質のヒトの脳発達影響への外挿を見据えたin vitroでの代替実験法・スクリー ニング法の確立に利用できる成果となることを念頭に研究を進めている。 平成25年度においては、これまでヒト胎児由来神経前駆細胞を用いたダイオキシン曝露影響についての検証から、ダイオキシン 曝露が分化の初期段階に作用し、神経系細胞の分化状態に影響を及ぼす可能性が示唆された。このため、この時点での発現変化を起こしている遺伝子をマイクロアレイ法用いて探索を試みた。さらに、このデータをもとにどの細胞内シグナル経路を介しているかを明らかにするため、カスケード解析を行った。その結果、これまでに報告されているセロトニン受容体を介する系のみならず、他の経路においても関与が認められた。現在これらの系におけるダイオキシンの作用機序について解析を進めている。また、アリル炭化水素受容体ならびにアリル炭化水素受容体核内移行因子のノックダウンによる神経系細胞への 分化におけるアリル炭化水素受容体ならびにアリル炭化水素受容体核内移行因子の働きに関する検証も進行中である。 一方、実験動物を用いた研究では、研究期間を通じて、施設・研究体制の変更なども含め、十分な個体数を用いて検証することができなかった。現在、これらの研究も進行中であり、継続してデータを取得、解析し、研究成果を発表する予定である。 これまでの成果を日本環境ホルモン学会、日本衛生学会等での学術総会で発表を行った。 またこれまでの成果をまとめ、論文を執筆中である。
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