本研究では、Pseudochoricystis ellipsoideaが有する、軽油生産能を高めた株の作出を最終的な目的としている。本年度は、それを達成するために以下の研究を行った。 1.軽油生産に関わる遺伝子の同定 まず始めに、軽油合成が行われていると考えられる、小胞体を多く含む画分(ミクロソーム)の単離法の確立を試みた。当該緑藻は、細胞壁が非常に頑丈であったため、細胞破砕方法を検討した結果、フレンチプレスを用いる事により、ほぼ完全に細胞破砕する事に成功した。フレンチプレスで細胞破砕後、超遠心機にてオルガネラを分画してミクロソームを単離した。単離したミクロソームを可溶化し、二次元電気泳動にてタンパク質を分離した結果、窒素欠乏下で誘導されるタンパク質を数個確認する事に成功した。 2.形質転換系の確立 形質転換系の確立は、軽油高生産株の作出に欠かす事の出来ない技術である。前述した様に、本株の細胞壁は非常に強固である。そのため、物理的に外来遺伝子を細胞内に導入することが可能な、パーティクルガン法による形質転換体取得を試みた。まず始めに、マーカー遺伝子を選定するため、各種抗生物質に対する本株の感受性を調べた。その結果、G418に対して強い感受性を示す事が明らかになったため、NPTII(neo)遺伝子をマーカー遺伝子として使用することにした。パーティクルガン法における打ち込み圧などの各種条件を検討した結果、最終的にG418耐性株を得る事に成功した。それら細胞における、NPTII遺伝子転写産物とNPTIIタンパク質をRT-PCRとウェスタンブロット解析にて確認した。
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