研究課題/領域番号 |
22681010
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 壮輔 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70548122)
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キーワード | 微細藻類 / バイオマス / 緑藻 / パーティクルガン |
研究概要 |
本研究では、Pseudochoricystis ellipsoideaが有する、脂質や炭化水素生産能を高めた株の作出を最終的な目的としている。本年度は、それを達成するために以下の研究を行った。 1.脂質・炭化水素生産に関わる遺伝子の同定 窒素枯渇条件0、12、24、48、72、96時間後の計6ポイントで細胞を回収し、昨年度確立した小胞体を多く含む画分(ミクロソーム)の単離法に従い、ミクロソームをそれぞれ単離した。その後、単離したミクロソームを可溶化し、二次元電気泳動にてタンパク質を分離し、窒素枯渇条件0時間を対象とし、スポットのバンド強度が上昇しているものに加え、減少しているものをピックアップした。その内、窒素枯渇条件24時間後のサンプルで増減が観察された計20スポットをプレ実験とし、LC-MSを用いて配列を決定した。その後、相同性検索にてタンパク質を同定した。 2.形質転換系の確立 形質転換系の確立と導入するプラスミドは、脂質・炭化水素高生産株の作出に欠かす事の出来ない技術である。昨年度パーティクルガン法を用いて外来遺伝子NPTII(neo)を導入し、その発現を確認したが、本年はまずその外来遺伝子がゲノムDNAに組込まれ、安定的に保持されている事を確認した。次に、緑藻のモデル生物であるChlamydomonas reinhardtiiで使用されているプロモーターが、P.ellipsoideaにおいても使用出来るか否かについて検討を行った結果、HSP70/RBCSプロモーターを用いた時にG418耐性株を取得する事に成功した。その後、打ち込みに供する細胞の状態、パーティクルの径や種類、細胞壁の再生条件などを検討した。これら一連の実験で得られた形質転換体の数から形質転換効率を算出したところ、10^7細胞あたり1.7~5.8個であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
形質転換に使用可能なプラスミドを数種類構築し、それらを用いて安定的に形質転換体を取得可能になったことから、Pseudochoricystis ellipsoideaにおける形質転換系を初めて確立出来たと言える。この事は、確立した形質転換系を用いて、脂質・炭化水素生産に関わる遺伝子の解析が可能になった事を意味する。一方、脂質・炭化水素生産に関わる遺伝子の同定では、数個の候補遺伝子を同定しているので、それらを順次P.ellipsoidea内で恒常的に発現させることで、脂質・炭化水素生産への関与を立証出来る段階に来ている。これらのことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の形質転換系の効率は、他の緑藻で確立されている形質転換系の効率に比べて低く、実際に多くの形質転換体を取得するにも低い。よって来年度では、現状の形質転換系を用いて標的遺伝子の構成的発現株などを取得すると同時に、多くの形質転換体を取得するため、強いては、本株での分子生物学的・遺伝子工学的アプローチでの研究の礎を築くためにも、形質転換効率を現状の10~50倍向上させることを目標に改善を進める。これらの解析で得られた株における脂質・炭化水素量を解析する事で、各々の遺伝子の機能を明らかにし、脂質・炭化水素高生産株の作出を目指す。
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