研究課題/領域番号 |
22681011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤原 英樹 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (10374670)
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キーワード | 光局在場 / ランダム構造 / プラズモン |
研究概要 |
本年度は、数値解析による金属ランダム構造内の欠陥領域に誘起される局在モードの数値解析と、局在モード制御手法の原理検証を目指したランダムレーザー発振実験を行った。 昨年度から継続して、金円柱がランダムに分布し、その中心に欠陥領域としてガラス円柱を配置した2次元解析モデルの解析を継続して行った。昨年度は、TE励振により欠陥中に磁場成分の強い局在スポットが現れる事を確認した。この結果をさらに理解するため、ランダム構造サイズを小さくしていき、モードの空間的広がりを検討した所、欠陥周辺の直近の円柱のみが寄与している事が明らかとなった。この結果は、欠陥周辺の金円柱によりいわゆるスプリットリング共振器構造が形成されており、この共振器の共鳴によりリング共振器中心に磁場の局在スポットが現れている事を示している。つまり、円柱の局在型プラズモン場が強く、多重散乱の干渉効果の影響が小さいことを示しており、本提案で期待していた多重散乱とプラズモン共鳴の相乗効果が期待できる様な系ではない事が明らかとなった。 本課題の当初計画には無かったものの、本課題の基となった誘電体ランダム構造内欠陥領域による局在モード手法の数値解析的な提案に対して、その実験的な検証に著しい進捗があり、本課題に関連する重要な実験であるため、本課題内において行う事とした。数値解析モデルに対応した試料として、市販の酸化亜鉛ナノ粒子に液中レーザー溶融法を適用し、サイズ・形状の揃った酸化亜鉛ナノ粒子を作製した。この酸化亜鉛ナノ粒子中に高分子ナノ微粒子(欠陥)を混入した薄膜を作製した。欠陥におけるランダムレーザー発振の観測を行った所、マルチモードの一般的なランダムレーザー発振とは全く異なる発振特性の観測(単一モード発振、低しきい値化)に成功した。本結果は、ランダム構造の局在モード制御の可能性を示唆する重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、金属ランダム構造の数値解析を継続し、金ナノ構造の試作と光学特性の評価を試みる予定にしていた。しかし、数値解析結果において、考えていた構造モデルでは、伝搬・散乱光の多重散乱・干渉効果によるランダム構造とプラズモン共鳴の相乗効果を得る事が出来ない事が分かり、数値計算の方向性を再検討する必要があった事から、実験的な検証に関してはストップしている状況である。また、本課題の基となった誘電体ランダム構造中の欠陥領域による局在モード制御技術の実験的な検証研究に著しい進捗があり、本課題に密接に関連する重要な実験課題でもあることから、当初計画を変更し、本研究を優先的に行う事とした。このため、当初の計画から遅れが生じてしまったものの、得られた成果は、本課題の実際の構造のデザインや試作を行う際に重要な知見・要素技術となるため、本年度の研究進捗にとってメリットとなると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の進捗として、本研究計画には無かったものの、本研究の基となったランダム構造内の局在モード制御技術の実験的な検証に成功した。この結果は、ランダムな構造においても、その光学特性を制御可能である事を示唆する重要な成果である。このため、今後の推進方策として、まずはこのランダムレーザー発振制御の構造パラメータ(欠陥サイズや散乱体サイズ等)依存性を明らかにし、この制御方法の有効性の実証を行う事を優先する。 また、本年度購入した3次元電磁波解析用ソフトウェアを用いて、同じ波動である伝搬型のプラズモン場に本手法を適用するための準備(モデル作製や光学特性の検証)を行い、伝搬型プラズモン場への本手法の有効性について検証する。特に構造として、ガラス上の金属薄膜に誘電体円柱を分散させた構造を想定しており、誘電体円柱による伝搬型プラズモン場の散乱、干渉効果による金属薄膜面上の局在場発生について検証を行う。
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