本研究では、散乱体の共鳴散乱と欠陥構造を利用した金属ランダム構造中の光局在場の制御方法の確立と検証を目指している。昨年度まで継続していた2次元FDTDを用いた2次元円柱ランダム構造のプラズモン場解析に関しては、空気中に孤立した個々の円柱の局在型のプラズモン場が強く現れるために、構造全体の多重散乱場の干渉効果の影響が小さく、本制御手法は適さない事が明らかとなった。このため今年度は、原理検証を目指したランダムレーザー発振制御の研究と、伝搬型のプラズモン場への拡張を目指した数値解析プログラムの準備を優先した。 特に本年度は、昨年度から継続して、本課題の基となった誘電体ランダム構造中の欠陥領域による局在モード制御技術の実験的な検証研究を行った。特に、欠陥局在モードに対する欠陥サイズや散乱体サイズ等の構造パラメータ依存性について検証を試み、構造パラメータがレーザー発振挙動に及ぼす影響についての検討を行った。その結果、現れるレーザー発振ピーク波長は、周辺の個々のナノ粒子のミー散乱共鳴を反映した波長帯域に現れ、欠陥サイズには依存しない事が分かった。また、欠陥サイズは発振ピーク数に影響し、サイズが小さい(大きい)と、発振ピーク数が減少(増加)する事が明らかとなった。これらの結果は、既に行っている2次元FDTD数値解析の結果とも定性的に良く一致しており、本研究結果は、不規則な構造においても散乱体や欠陥サイズ等の構造パラメータの適度な最適化により、局在モード制御が可能である事を端的に示した画期的な成果である問言える。また、この結果は同じ波動である伝搬型のプラズモン場にも同様に適用できると考えており、現在本申請テーマの内容を継続し、3次元数値解析への拡張を行っている所である。
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