研究課題/領域番号 |
22681012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安武 裕輔 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10526726)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 単一光子 / 微細構造 / スピン / シリコン / ゲルマニウム |
研究概要 |
本研究では、半導体ナノ粒子と外部制御端子を融合させたオンデマンド単一光子源の創製を目的としている。 本年度は固体基板上で容易に実現可能な単一光子源の探索を行い、シリコン中点欠陥、CVDダイヤモンド中窒素欠陥の発光特性の精査、また超高真空分子線エピタキシ装置を用いてシリコン基板上に伸張歪ゲルマニウム結晶薄膜を形成し、薄膜ゲルマニウムの直接遷移端への室温における光スピン注入を実証した。シリコン基板上のゲルマニウム薄膜は単一光子源として期待されるIII-V族量子構造をシリコン基板上に形成する上で重要な下地層として利用可能であり、またゲルマニウム直接遷移端自身も通信波長帯域に合致しており、微細構造導入と外部制御端子との組み合わせにより新規単一光子源として期待できる。 また単一光子源を実空間上で評価することが重要である。そこで顕微フォトルミネッセンス測定系の構築を行い、可視領域から2.5μmの赤外波長までの発光波長を実空間上で1μm程度の空間分解能でマッピングすることが可能となった。空間上に点在する結晶欠陥、微細構造からの発光をより詳細に追跡することが可能となり、より精査な単一光子の評価が可能となった。 現状では近赤外領域における単一光子発生能の評価として重要な光子の2次相関測定が検出器の問題から達成できておらず課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シリコン基板上にオンデマンド単一光子源を創製することを目的とし、半導体ナノ粒子をはじめとし、結晶中点欠陥の発光特性の評価と顕微測定系の構築、シリコン基板上への単一光子源を含む薄膜清澄技術の確立を行っており、試料作製、測定を含めた実験系の構築はおおむね順調である。しかし単一光子の実証に重要の2次強度相関測定に重要な単一光子検出器、とくに近赤外領域(900~1650nm)が市販製品の価格・ノイズが性能として十分でなく、大きな問題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では半導体ナノ粒子を用いた単一光子発生器の創製を目的とし、以下の計画に基づき研究を実施する。 三端子構造を有する単一光子発生器の試作と共振構造の融和 半導体ナノ粒子上の精密電荷制御を目的として、半導体ナノ粒子への電荷注入用のソース・ドレイン電極に併 せて、ゲート電極を組み込んだ三端子構造の作製を行う。ゲート電極はシリコン酸化膜を絶縁層に有するシリコ ン基板、また溶液中における半導体ナノ粒子からの発光測定にむけて、ポテンショスタットの3電極を用いた三 端子構造も併せて試作する。発光取り出し効率の上昇を目的として、ポーラスアルミナによる微細周期構造を テンプレートとする共振構造、SiO2/SiN積層膜から構成されるDBRミラーを利用した外部共振器構造の作製も併せて行う。 昨年度までに精査した半導体ナノ粒子、ゲルマニウム直接遷移端と併せて、ワイドバンドギャップ半導体中点欠陥を利用した単一光子源の探索 熱的に安定で室温動作可能なワイドバンドギャップ半導体中に形成される点欠陥を利用した単一光子源の利用を模索する。具体的にはCVDで形成したタイプIbダイヤモンド中の窒素ー炭素欠陥を代表とする欠陥発光の観察 とイオン液体による外部ゲート電極による発光制御、SiC中窒素欠陥を利用した通信波長帯域における単一光子 発生と金属電極・イオン液体を用いたゲート操作、Si中の点欠陥・線状欠陥、具体的にはSi-C点欠陥(G-center) 、311線状欠陥の電流注入による発光観察と磁場中発光観察によるスピン分裂を利用したスピン偏極単一光子源 の実証を目指す。
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