研究課題/領域番号 |
22681015
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中嶋 琢也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 准教授 (70379543)
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キーワード | 光物性 / ナノ結晶 / 半導体 / 分子認識 / キラリティ / 表面・界面物性 / 合成化学 |
研究概要 |
申請者は、キラル配位子を有する半導体ナノ結晶における光学活性の起源を明らかにし、配位子-ナノ結晶界面においてキラル構造が記憶されることを初めて見い出した。本研究では、半導体ナノ結晶界面におけるキラル転写、メモリーシステムを確立し、さらに、キラル逆転写・増幅ならびにキラル識別システムへ発展させ、半導体ナノ結晶界面を基盤とするキラル超分子化学の開拓を目指す。 本年度は、表面に局在化したキラル構造を実証するため、金属結合部位がそれぞれチオールならびにセレノールであるD,L-システインならびにセレノシステインを配位子として、CdSeならびにCdTeナノ結晶を合成した。システインで保護されたCdSeならびにCdTeナノ結晶はバンドギャップが異なるにもかかわらず、ほぼ同一の円二色性(CD)スペクトルを与えた。これはセレノシステイン保護ナノ粒子についても同様の結果が得られた。一方、コアを同一のCdTeとして、表面配位子をシステインとセレノシステインとしてそのCDスペクトルを比較すると、システインと比較して、セレノシステインにおいてCDピークの長波長シフトが観察された。以上の結果はキラル配位子で保護された半導体ナノ結晶において、その不斉源が半導体ナノ結晶-配位子界面に局在化していることをサポートした。また、システインとセレノシステインを等量混合して作製したナノ結晶においては、システイン保護ナノ結晶とセレノシステイン保護ナノ結晶の中間のCDスペクトルが得られ、表面配位子の組織化による協同効果はないものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常、半導体ナノ結晶と配位子との結合には、チオール基が用いられ、金属-チオール結合に不斉構造が局在化していることを考察していたが、今回、セレノール基で保護したナノ結晶を世界で初めて合成し、CDプロファイルが変化することを初めて見い出した。これは、我々の考察を支持するものであり、研究を大きく進展させた。
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今後の研究の推進方策 |
半導体ナノ結晶界面特有のキラル化学を実証する。具体的には、表面特異的な隣接発色団、蛍光団間のキラル-キラル間の励起子カップリング(ジアステレオ的)による、特徴的な円二色性ならびに発光(円偏光発光)特性の発現について検討を行う。また、これまで達成できていないキラル場を記憶した半導体ナノ結晶表面を利用して、有機配位子への逆転写について検討する。
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