当プロジェクト最終年度は、電気パルスにより細胞の接着・剥離を達成する新たな機能性チオフェンモノマーを新たに合成し、その応用を達成した。さらには、温度刺激による細胞をリリースする異なるマテリアルの開発も達成した。 1. ハイドロキノンを側鎖に有する新たなモノマーを合成した。ハイドロキノンによる官能基は、酸化によるキノンモノマーとアミノオキシ基との反応によりオキシミンリゲーションを形成が可能である。ハイドロキノンとキノンの表面では細胞が強く接着する知見を得た。そこで、細胞の接着と剥離のコントロールを達成するために、酵素吸着抑制を示すモノマーである双性イオンのホスホリルコリン側鎖を導入した。還元状態において、オキシミン基はハイドロキノン基に還元される。 2. 合成したモノマーにより機能性分子の空間的な固定とリリースも達成した。相互嵌合電極上にポリマー薄膜を調製し、アミノオキシ基を含むAlexa488色素を薄膜上に固定化した。相互嵌合電極に異なる電位を選択的にかけることで、Alexa色素を相互嵌合電極の作用電極に選択的に固定した。また、Alexa色素で修飾した電極表面からの選択的な色素のリリースは、15分間PBSバッファー中で還元電位をかけることで達成した。蛍光色素を選択的にリリースした。 3. チオフェン膜上での細胞の成長と、電気刺激により選択的なリリースを達成した。電気パルスにより細胞成長を促進し、また電気刺激により細胞のリリースをした。 4、 温度応答性高分子ブラシでコートしたナノ構造シリコン基板により、デバイスによる腫瘍細胞の細胞捕捉能の向上を達成した。捕捉した細胞は、デバイスの冷却によりリリースすることができる。リリースした細胞は高い生存率であり、生化学的な実験に用いることができる。
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