高等植物のみで大きなファミリーを形成するPPR蛋白質は、ミトコンドリア、葉緑体のゲノム情報をRNAレベルで配列特異的に維持・管理している。本研究はPPR蛋白質のRNA結合特性を明らかにすることで、PPR蛋白質による植物のオルガネラ遺伝情報維持機構に新たな知見を得ることを目的としている。 本年度は、既に予備的な知見を得ていたPPRモチーフ中のRNA結合に関わるアミノ酸群の詳細な解析を行った。様々な天然型および変異導入PPRモチーフを用いて解析を行った結果、塩基認識、親和性にそれぞれ寄与するアミノ酸群を同定した。当該アミノ酸について、約5000個のPPRモチーフを用いて統計解析を行い、当該アミノ酸群の連続性、および協調的な働きについて知見を得た。また、異種植物間での相同遺伝子のアミノ酸多型を解析することで、同義の働きをするアミノ酸群について知見を得ることが出来たため、PPRモチーフのRNA認識コードについてある程度単純化した分類分けを行った。平行して、RNA結合特性を解析する手法として、新たにSELEX法の構築を行った。シロイヌナズナHCF152蛋白質を用いたところ、過去に部分欠失RNAを用いて同定した結合RNA領域20b中の約10bとほぼ一致するRNA配列をSELEX法によって得ることが出来た。生化学的な解析結果と合わせて、さらに考察を進めている。 また、PPR蛋白質のRNA結合特性解析手法として、試験的にPhage Display法の導入を試みた。いくつかのPPRモチーフをライブラリーに組み込んで実験したところ、ligandに用いるRNAに応じて特定のアミノ酸を持つPPRモチーフが選択的に濃縮されることがわかったため、ライブラリーに含まれるPPRモチーフを増やして新たな実験系の構築を進めている。
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