研究課題/領域番号 |
22681029
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
荒川 和晴 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特任講師 (40453550)
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キーワード | メタボローム / クマムシ / プロテオーム / 乾燥耐性 / システム生物学 / CE-MS / LC-MS / 極限環境 |
研究概要 |
緩歩動物門を形成する微小動物クマムシのうち、陸生のものの多くは乾燥耐性を持ち、乾燥に曝されると脱水してほぼ完全に代謝を停止した乾眠と呼ばれる状態に移行する。クマムシは乾眠状態では超高温・超低温・超高圧・真空・放射線などに耐性を示しこれらのストレス曝露後も給水により速やかに生命活動を再開する。しかしながら、乾燥耐性や極限環境耐性の分子機構には不明な点が多く、分子生物学的なメカニズムの解明が待たれている。そこで、本研究では通常/乾眠時の定量的かつ網羅的なメタボローム(イオン性化合物・核酸・糖・脂質)及びプロテオーム(量及びリン酸化状態)を測定し比較するマルチオミクスの手法により、乾眠の分子機構をシステムとして解明することを目的としている。 本年度は、クマムシメタボローム解析における1.サンプル破砕方法、及び、2.メタボライト濃縮法の条件検討を行い、一番のボトルネックであった必要サンプル量を劇的に減らし、約半分の量で測定を行う方法を確立した。また、サンプル間の比較のための量の相対補正アルゴリズムを開発し、実際に通常と乾眠それぞれの状態のクマムシのメタボロームプロファイルをイオン性化合物にキャピラリー電気泳動質量分析器(CE-TOFMS)及び高速液体クロマトグラフ質量分析器(LC-TOFMS)を用いて測定した。現段階で主に浸透圧ストレスや酸化ストレス応答などが見られているが、次年度さらに測定を時系列で行うための基盤ができたと言える。 また、プロテオームにおいても破砕法やリン酸化タンパク質の濃縮に関しての条件検討を始め、現状ではまだ乾眠1条件のみの測定に限定されるものの、千種を超えるリン酸化タンパク質のLC-MS/MSによる計測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに本年度までに2条件での比較メタボローム解析に成功し、またプロテオーム解析も条件検討が進んでいる。プロテオームのデータが出揃い次第システムとしてのダイナミクスを解析できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画には記載していないが、2条件の比較メタボロミクスでは予想以上に物質の変動が複雑であったため、より詳細にそのダイナミクスを理解するために、時系列でのメタボローム解析を追加で行う。そのためのボトルネックであったサンプル量の問題に関しては本年度までの微量サンプルによるメタボローム解析の条件検討に成功した事で挑戦的ではあるが十分に可能であると考えている。
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