研究課題
平成22年度においては、まずタンパク質メチル化を制御する酵素群のがん組織における発現解析を網羅的に行った。その結果、LSD1,PRMT1,PRMT6,KDM5Bなどの酵素の発現が、がん特異的に亢進していることを確認した。また、がん細胞の増殖に対するこれらの酵素の影響を観察する為に、siRNAを用いてノックダウン試験を行った結果、増殖が有為に抑制されたことから、これらの酵素群ががん細胞の増殖に重要な働きをしている可能性が示唆された。さらにLSD1に関してはhistone以外の基質を同定する為に免疫沈降を行った結果、RBの脱リン酸化酵素であるMYPT1と結合することが分かった。MYPT1がLSD1の基質となり得るかどうかを確認する為に、in vitroのメチル化試験及び脱メチル化試験を行った結果、442番目のリジンがヒストンメチル化酵素SETD7によってメチル化され、LSD1により脱メチル化されることが分かった。このメチル化はタンパク質の安定性を制御しており、メチル化されると安定化され脱メチル化すると不安定になることが分かった。詳細な機能解析の結果、この安定化・不安定化はメチル化とユビキチン化のクロストークによって制御されていることが分かった。MYPT1が不安定になり、degradationが進むことによりRBのリン酸化が亢進することから、LSD1の発現ががん細胞で亢進すると脱メチル化を介してMYPT1の安定性が失われ、その結果RBの異常リン酸化を介してがん細胞の増殖を促す事を明らかにした。これはヒト発がんにおける新しいメカニズムであり、またLSD1は"がんの分子標的治療薬の開発"における有望な標的であることが証明された。以上の結果、平成22年度の研究内容は交付申請書に記載した"研究目標"に非常に合致した内容であり、また研究実施計画通りの進捗が見られた。
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