研究課題
平成23年度においては、引き続き"ヒト発がん"において重要な働きを行っている、タンパク質メチル化関連酵素の同定及び機能解析を行った。まず、ヒストンメチル化酵素EZH2が肺がん、膀胱がん、大腸がんなど様々なヒトがん組織で発現が亢進し、がん細胞の増殖制御、特にG1/S transitionにおいて重要な働きをしている事を突き止めた。また、292検体を用いた非小細胞肺がんtissue microarray解析の結果、EZH2の陽性例において、有意に予後が悪い傾向が見られた。続いて、ヒストンメチル化酵素EHMT2が肺がん・膀胱がんなどがん組織において、RNAレベル及びタンパク質発現レベル双方において高発現していることを発見した。EHMT2のヒト発がんにおける意義を調べる為に、Gene Chip発現解析を用いて下流遺伝子の探索を行ったところ、SIAH1の発現がEHMT2によって、抑制されることを見出した。この結果から、がん細胞におけるEHMT2の発現を抑制することにより、SIAH1の発現を誘導し、増殖抑制及びアポトーシス誘導が惹起される可能性が示唆された。さらに、ヒストンメチル化酵素WHSC1が膀胱がん・肺がんを含む多くのがん種でRNAレベル及びタンパク質発現レベル双方において、発現が亢進していることを見出し、がん細胞の増殖制御、特にG2/M期で重要な働きをしている事を発見した。WHSC1の発がんにおける意義を解明する事を目的に、結合タンパク質の同定を行った結果、βカテニンを含むWnt関連タンパク質と結合する事を見出した。TOP FLASH/FOP FLASH解析やChIPアッセイによる詳細なプロモーター解析1により、WHSC1はWnt関連タンパク質と結合し、ヒストンH3K36メチル化を介してcyclin D1遺伝子の発現を制御している事を見出した。これらの知見を基に、引き続き分子標的治療薬創生を行っていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
タンパク質メチル化関連酵素の網羅的解析を行った結果、当初予定していた数より多くのがん関連酵素が同定された。その結果、今年度に6報の原著論文が同定され、さらに3報の原著論文を現在投稿中である。
これまでは、論文投稿を目標とした基礎研究が中心であったが、今後は分子標的治療薬創生を強く意識し、応用研究に発展させていく予定である。その為に、まず低分子化合物のスクリーニングを目指したhigh-throughput screening systemの構築を行う予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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10.1111/j.1349-7006.2011.01958.x