著者らのグループはDTNB誘導体がTRPC5を含む複数のTRPチャネルを活性化することを報告した。本年度は、その知見を基に、DTNBが有するジスルフィド結合周囲の置換基構造を変えて、酸化能および還元能が異なるレドックスケミカルライブラリーを構築した。得られたケミカルライブラリーの酸化還元電位は、直線走査ボルタンメトリーを用いて算出した。その結果、著者らの予想通り、ケミカルライブラリーの電子密度に応じた酸化還元能を示すことを確認した。 次に、これらの酸化型レドックスライブラリーを用いて、酸化に対する各TRPチャネルの効果を検討した。TRPチャネルの活性は、Ca2+蛍光性インジケーターであるFura-2を用いたライブセル蛍光イメージングにより行った。その結果、酸化型レドックスライブラリーが複数のTRPチャネルを活性化することを見出した。興味深いことに酸化型レドックスライブラリーに対する応答は各種TRPチャネルの種類によって異なり、中でもTRPA1チャネルは活性の低い酸化剤に対しても応答することを見出した。 著者らのグループはTRPチャネル活性を制御する機能未知なタンパク質を同定しており、酸化型TRPチャネルとの機能関連が考えられる。そこで、その遺伝子を欠損させたマウスの作成をトランスジェニック社に受託することで進めた。その受託作業が当初に提案いただいた予定より遅れたため、予算の一部を平成23年度に繰り越して遂行した。その結果、予定通り目的タンパク質遺伝子を欠損させたES細胞の取得まで成功した。
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