研究課題/領域番号 |
22681033
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清中 茂樹 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90422980)
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キーワード | TRPチャネル / レドックス / カルシウムチャネル / ケミカルライブラリー |
研究概要 |
昨年度に作成したレドックスケミカルライブラリーを用いて、還元剤で活性化するTRPチャネルのスクリーニングをHEK293を用いた過剰発現系で行った。各種還元剤に対する応答は、蛍光生Ca2+プローブであるFura2を用いて評価した。その結果、弱い酸化剤で活性化されたTRPA1チャネルが還元剤によっても活性化されることが明らかになった。すなわち、TRPA1は酸化側だけでなく、還元側でも活性化されることが示唆された。 TRPA1は酸化に対する強い感受性を持っており、その酸化還元電位は酸素よりも低電位側であった。そこで、TRPA1が弱い酸化剤として位置づけられる酸素で活性化されるのかどうかについて評価した。具体的には、酸素を一定時間バブリングした溶液でTRPA1の活性化をHEK293を用いて評価したところ、TRPA1の活性化が確認できた。活性酸素種による二次的な効果が懸念されたので、活性酸素種阻害剤を用いて評価したが、同様の結果が得られた。すわなち、TRPA1が酸素で直接活性化されることが示唆された。 本年度の結果から、TRPA1は還元側でも活性化することがわかった。そこで窒素バブリングを行った低酸素溶液でもTRPA1の活性化を評価した。すると、低酸素溶液でもTRPA1が活性化された。すなわち、TRPA1が酸素濃度を感知して活性化することが示唆された。 昨年度に、TRPチャネルの相互作用タンパク欠損マウス作成用のES細胞を取得したが、今年度はノックアウトマウス作成を遂行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、還元側で活性化されるTRPチャネルのスクリーニングを行い、還元側で活性化されるTRPA1チャネルを同定できた。前年度の結果も踏まえると、TRPA1は定常状態の酸化還元電位から外れることで活性化されると言える。また、TRPA1が極めて高い酸化感受性を有しているという実験結果に基づき、TRPA1が弱い酸化剤である酸素によっても活性化されることを見いだした。これらの結果はTRPA1の生理的意義を化学的手法により見つけてきたということを意味しており、ほぼ予定通りに研究計画が進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に同定した酸化感受性および還元感受性のTRPチャネルの生理的意義の解明を遂行する。酸素濃度を感知するという現象から考えると、TRPA1が肺に投射する迷走神経で機能する可能性が考えられる。そこで、マウスの迷走神経から単離した細胞を用いて、HEK293を用いた実験と同様に高酸素および低酸素による応答が確認できるかどうかを評価する。次に、マウス個体においてもTRPA1が酸素センサーとして機能しているかどうかを、酸素濃度変化に伴うマウスの呼吸回数の変動に着目して評価する。
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