研究概要 |
本研究の目的は、エンドサイトーシスを標的とした新たな癌分子標的治療薬を開発することである。本年度は、主に細胞表現型を指標にしたハイコンテンツスクリーニング系の構築とNPD1801の作用機作解析を行った。 ハイコンテンツスクリーニングで用いる予定であったエンドサイトーシス関連オルガネラマーカー安定発現細胞株の樹立が困難であったことから、細胞表現型変化を数値化するためのパラメータを変更して系を構築した。すなわち、HeLa細胞の明視野画像と核染色画像を取得し、細胞の形態・凹凸や核の形態など35パラメータを設定することで、化合物が誘導する細胞形態変化の特徴を数値化およびクラス分けをすることが可能となった。今後、エンドサイトーシス関連オルガネラの染色画像も追加してパラメータ数を増やしていく予定である。また、アッセイ系の構築と並行して、理研天然化合物バンク(NPDepo)の化合物ライブラリーおよそ30,000化合物について、癌細胞増殖阻害活性を評価しデータベース化した。この活性情報をもとに、抗癌性化合物のハイコンテンツスクリーニングを実施し、目的の活性化合物を取得していく。 前年度までに、NPD1801は細胞内でカルモジュリンと特異的に結合することを明らかにしてきた。本年度はNPD1801が誘導する細胞質空胞化の作用機構解析を行った。その結果、NPD1801を処理した細胞では、カルモジュリンの機能阻害→Ras-Raf経路の活性化→後期エンドソームの膨張および後期エンドソーム-リソソームの融合阻害→リソソームの機能不全が引き起こされていることが示唆された。
|