研究課題
本研究では、旧植民地域で形成される多言語社会における言語変化のメカニズムを総合的に解明することを主たる目的とし、パラオの旧宗主国の言語である日本語と英語の盛衰の言語内的・外的要因、過程、程度をミクロな視点から精緻に調査している。4ヵ年計画の初年度の研究として、本年度はパラオ日本語変種およびパラオ英語変種の言語学的分析を行うためのデータを揃え、変異理論を用いて本格的に分析するための所要の整備を進めた。具体的には、パラオで現地調査を行い、両言語の会話データを収集し、帰国後は電子ファイルに変換するとともに会話を活字化し、調査対象となる言語変異の各変異形の頻度等を調べ、統計ソフトへの入力作業およびパイロット的な定量的分析を行った。途中段階ではあるものの、これらの研究成果は第43回欧州言語学会(43rd Annual Meeting of the Societas Linguistica Europaea)において報告し、関係専門家によるフィードバックを参考にしつつ、さらに研究を深めている。また本年度、国際学術雑誌『Multilingua』より公刊された論文「The role of social networks in the post-colonial multilingual island of Palau : Mechanisms of language maintenance and shift」が、日本オセアニア学会賞を受賞した。本稿は、パラオにおける旧宗主国言語の盛衰の言語外的要因をマクロな視点から分析したものであるが、今後、本研究でミクロな視点から言語内的要因を分析するうえで活かされる。
すべて 2010
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日本語学
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Linguapax Asia : A Retrospective Edition of Language and Human Rights Issues, Collected Proceedings of Linguapax Asia Symposia 2004-2009.
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