研究課題/領域番号 |
22682005
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森平 雅彦 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (50345245)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 東洋史 / 朝鮮史 / 東アジア交渉史 / 交通 |
研究概要 |
本研究では、朝鮮史研究の立場から前近代東アジア交流史像をとらえなおす作業の一環として、中世の朝鮮半島と周辺地域との相互交流を成り立たせていた交通ルートを解明すべく、①高麗前期の対宋関係における海上航路、②高麗後期の対元関係における海上航路、③高麗~朝鮮前期における対日窓口港、④元・明代北京との陸上交通路、の4テーマを掲げている。本年度はこのうち③を重点課題とし、次のような点を明らかにした。 (1)朝鮮中世の対日対応拠点は、高麗前期には平和的通交の窓口として金海が指定されていたが、モンゴルの日本侵略に高麗が関与して両国関係が悪化するなか、その地位は日本に対する攻撃または防衛の拠点としての合浦にうつり、朝鮮時代には再び平和的な通交窓口として新たに三浦が開かれた。 (2)モンゴルの日本侵略後に合浦を中心として朝鮮半島南岸に構築された対日防衛網の拠点立地は、高麗最末期の倭寇対策にひきつがれ、さらに朝鮮前期の沿岸防衛拠点の立地にまで継承された。 以上のような通交窓口や軍事拠点のうち、韓国慶尚道南東部(慶州~釜山~金海)に所在するものについては、2月に現地調査を実施し、確認作業をおこなった。また上記の分析結果について九州史学会の国際シンポジウム(12月)において口頭発表をおこなった。 また④について、北京~瀋陽間の元代駅伝ルートの現地調査をおこない、韓国の学会誌『震檀学報』に論文を掲載した。さらに②について前年度での概況把握にもとづき、成果の一部をアジア海域史の概説書にもりこんだ。資料データベースについては「高麗・宋関係朝鮮史料集続編」の校閲、ならびに『燕行録全集』にもとづく大陸陸上ルート事例調査を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4件にわたる重点項目のうち、④については学会口頭発表と論文公表を完了し,③については学会口頭発表を終え,論文化を進めているところである。①については基本的な調査を完了し、成果公開にむけて準備を進めている。②についても初歩的な調査を終え、成果の一部を概説書に盛り込むなどしており、次年度において重点課題として完了をめざす予定である。現地調査についてもこれまで予定どおりに進捗している。 以上のように重点課題に関する研究は当初計画どおり、ないしそれ以上の進捗といえる。ただ資料データベースの作成については、初年度以降、大学院生の異動等の理由によりマンパワーの確保に難を来している部分があり、代表者本人による負担が大きくなっており、やや進捗が鈍化している。 以上により全体としては「おおむね順調な進展」と評価される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり、事業の最終的なとりまとめの一環として次のような事業を進める。(1)重点課題③の論文化。(2)重点課題①の成果公表。(3)重点課題②の調査とそのとりまとめ、および成果公表。(4)未調査地の現地調査(中国遼東地方、韓国南岸)。ただしこれについては国際情勢の悪化にともなう障害が生じる可能性もある。(5)資料データベースの完成。
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