研究概要 |
カムチャツカ半島から出土した土器の時間的変遷を解明するため,土器に付着した炭化物,土器の胎土内に残留した炭化物,土器と共に出土した木・樹皮製品のサンプルを採取し,このうち28点の試料について放射性炭素年代測定(AMS法)および質量分析計による窒素・炭素安定同位体測定を行なった。これにより,「古コリャーク文化」期の土器や有機質素材の理化学的年代をはじめて体系的に明らにすることが可能となり,また,型式学的な特徴との対比を行なうための手がかりを得ることもできた。これとともに,「古コリャーク文化」の起源地とされるオホーツク海北岸から出土した土器とカムチャツカ半島との対比を行なうことを目的として,マガダン周辺の遺跡から出土した「古コリャーク文化」期やその前段階とされる「トカレフ文化」期の土器の付着炭化物,胎土内残留炭化物,遺構出土炭化物等の採取を行なった。さらに本研究では,胎土内残留炭化物が海洋資源ではなく陸棲の植物に起源することを,炭素・窒素安定同位体比だけではなく他の方法によってクロス・チェックする手続きを踏むことで,より信頼性の高い方法を確立することを目的としている。この課題を土壌学の微粒炭分析を応用することによって解決する予定であるため,微粒炭の標本作成,観察,顕微鏡撮影などを実施し,理化学的な年代測定を行なった試料や,今後分析を行なう試料について,微粒炭分析からその起源物質を特定するための準備作業を行なった。
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