本年度は、以下に具体的に示す通り、今般の研究課題を実現するための下調査を中心に行い、これによって会社法の運用、あるいは商取引のありよう等の実態に関する情報を獲得することができた。これは平成23年中にまとめられるべき研究の貴重な素材となるものである。 第1に、研究の目的にもあるように商法典から会社法や保険法が独立していくという実態について、また商法典がどのような形式で存在しうるかについて、比較法的な素材の収集、及びわが国における資料・情報の獲得を行った。比較法的な素材の収集については、平成22年11月にドイツにおける現地調査において、これを行うことができた。具体的には、ドイツ法務省の会社法関係の立法担当官、及びデュッセルドルフ大学教授Noack氏に対するインタビューにおいて、ドイツにおける会社法の位置づけについて調査することができた。また、わが国における資料・情報の獲得については、平成22年10月の私法学会に参加し、会社法・保険法が独立したのちの商法典の体系的あり方について知見を得たほか、商法制定間もない時期の多くの文献を購入し、その内容を調査している。 第2に、今日の実務における会社法の運用や商取引のありようについては、やはり平成22年11月のドイツにおける現地調査において、VolkswagenやContinentalといったメーカー、あるいはAllianzやHannover再保険といった金融機関、さらにDeutsche Postのような公益企業において、その実態について若干のインタビューを行うことができた。また、平成22年9月には静岡市所在の鈴与株式会社を訪問し、清水港を中心とした海上運送及び港湾運送取引のあり方について実地調査を行った。
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