研究課題/領域番号 |
22683001
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
松井 秀征 立教大学, 法学部, 教授 (30282536)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 商法 / 会社法 / 商取引法 |
研究概要 |
本年度は、一定の研究成果を出すことを主たる目的として研究を進めた。そこで前年度に引き続き、今般の研究課題を実現するための下調査を継続しつつ、その調査の結果を一定の研究成果にまとめる作業を中心に行った。 第1に、商法典から会社法や保険法が独立していくという実態に対する理論的分析について、残念ながら当初予定していたスイス法やイタリア法の情報収集を行うことは十分なしえなかった。だが、前年度までのドイツ法およびフランス法の情報収集等を踏まえて、商法典という法典の存在が19世紀の歴史的な背景、あるいはそれが成立した地理的要因に結び付けられていることをについて、論文として研究成果にまとめることができた(商事法務より平成25年度秋から冬に出版予定の論文集に収録予定)。 第2に、商行為法の改正に伴う理論的研究としては、前年度までにおこなったドイツの運送法に関する研究について出版計画が進展していないため、これが公表用の論文の形にまで進んでいない。他方で、社団法人商事法務研究会において新たに実務家を交えた運送法制研究会が開始し、これに参加して現在のわが国の運送法の今後のあり方について研究を重ねている。いずれにせよこの点については、少なくとも運送法分野につき、外部未公表ではあるが報告書という形での成果を残していることから、あとは外部に公表できる環境が調うのを待つことになる。 第3に、今日の商取引の実務(理論の具体的な取引への反映)に関する研究については、松井がリーダーとなって実施している商取引法研究会を継続して開催し、繊維メーカー、食品メーカー、陸上運送、海上運送の法務経験者からの聞き取りを行い、極めて有用な情報を獲得できた。これに加えて、個人的に継続的売買(新聞販売店契約)に関する調査を行い、これにまつわる判例の評釈を公表することで成果を残すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
商法典からの会社法や保険法の独立という問題に関する研究については、ドイツ、フランスに関する調査を前提とした論文を執筆することができたが、スイスやイタリアに関する調査がまだ進んでいない点でやや遅れている。 商行為法の改正に伴う理論的研究としては、運送法制を中心として研究を進めることができており、この点は充実した研究が行えている。また、比較法研究としても、外部未公表の形ではあるがドイツ運送法に関する報告書が出せている。 商取引の実務に関する研究では、継続的売買契約に関する判例評釈を公表することができた。ただ、これまでの調査により獲得した情報を考えるともう少し成果を出すべきであって、その意味ではやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究の最終年度に該当するため、商法典のありようとの関係で、少なくともスイス法、もしくはイタリア法の調査を行い、かの地において商法典が民法典に統合されていった事情について改めて明らかにして、我が国への示唆を得たいと考えている。そしてこれを成果物として公表したい。 そのほか、商行為法の改正、あるいは商取引の実務との関係では、すでに研究会の主宰、参加、あるいは資料収集等で相当の知見は蓄積してきているので、やはり成果物として公表したい。特に継続的売買関係、あるいは物流関係での成果物を出したいと考えている。
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