本年度は、最終年度ということもあり、これまで十分に研究ができていなかった部分に踏み込んで取り組むとともに、研究成果を公表することに尽力した。なお、研究実施計画に示した3点の内容に関する取り組みについては、以下のとおりである。 第1に、商法典という法典の存在それ自体に関する比較法的研究については、スイス法やイタリア法に関する研究調査を進めた。このうち、スイス法に関する部分については一定の成果を論文として取りまとめることができた(現時点では未公刊)。特にスイスにおいては、民法典(債務法)に商事事項の規定が置かれているが、このような立法がなされた背景や考え方についての研究を行うことができた。 第2に、商法典の存立意義に関する理論的研究、そして商行為法に関する理論的研究については、売買契約のうち継続的な売買契約、そして倉庫寄託契約に関して論文に取りまとめることができた(売買契約については現時点で未公刊)。なお、これらの論文については、当該契約に関する実務も踏まえた内容(インタビュー等から得られた知見を反映した内容)となっている。その意味では、研究実施計画における第3点目の内容、すなわち理論を具体的な商取引法の実務に反映するという観点からの研究計画も、これらの論文を通じて実現することができたと考えている。
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