研究課題/領域番号 |
22683006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
韓 載香 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特任准教授 (60396827)
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キーワード | マイノリティビジネス / 規制 / ネットワーク / 在日韓国・朝鮮人 / パチンコ産業 / エスニック・ビジネス |
研究概要 |
本研究は,日本の民族マイノリティの経済活動の特徴と要因を歴史的に解明するものである。このために、本研究では、彼らの代表的な産業に注目して分析してきた。本年度の研究実施計画は、第1に在日韓国朝鮮人の事業展開の特徴を表すパチンコ産業の歴史的解明及び学会での報告、第2にそれに基づいた研究書の執筆、第3にアメリカのマイノリティビジネスの調査であった。第3に関しては、2012年3月5日から14日まで調査を行った。 第1の計画については、パチンコ産業史のなかで飛躍的に発展した1980年代に注目し、その要因を明らかにした。1980年代にはパチンコ産業の成長性が注目され、活発な新規参入がみられた。その際、マジョリティも波に乗って参入したことにより、マイノリティビジネスとしての性格の変化が始まった。マイノリティビジネスへの従来の視点は、3Kの条件や現金商売、文化的背景を基盤にしたマーケットとの関連性が強固であり、歴史的な変化への配慮も乏しかった。それに対して、本研究で明らかにしたように、市場の成長(性)に関連してマイノリティビジネスとしての性格が異なる局面を迎えたことは、重要な論点を提示するものであった。また、パチンコ産業は、規制が強い産業であるが、規制が与えた企業者活動への影響と民族マイノリティの特徴的産業との関係性を明らかにし、経営史学会・企業家研究フォーラム合同開催研究例会で発表を行った。規制産業とマイノリティビジネスを関連付ける視点は、排除の論理である。規制はある特定の活動を制約する。マイノリティは、ホスト社会において特定領域での活動から排除される。しかし、それらは直ちに、民族集団を経済活動から全面的に締め出すことを意味しない。ある活動の制限は、取り組む問題を範囲の狭いかたちで明確にすることがある。その条件のもとで、課題を乗り越える企業者活動が展開されたと考えられる。この提起は、規制、排除と経済活動を相反するとした見方に異議申し立てをするものである。 以上は、第2の計画、出版予定の「日本における民族マイノリティ産業のパチンコ産業史」(タイトル未定)の一部として執筆中にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エスニックマイノリティビジネスとしてのパチンコ産業の歴史的解明のため集められた資料が膨大であるため、当初予定より、データの処理、分析に時間がかかっている。そのことにより、成果として2011年度のDPやレフェリー論文として発表するとした計画に遅れが生じた。現時点では、発表及び執筆んためのデータ処理が終了しており、2012年度には成果として発表することができると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
1.11の達成度で説明したパチンコ産業史研究の遅れの問題は、データ処理を終了したことによって解消した。2012年3月に行ったアメリカ調査の資料分析を行い、パチンコ産業史研究の内容を比較した内容をあわせてまとめ、第1と第2の内容を合わせて、16th ANNUAL CONFERENCE EBHA AND 1st JOINT CONFERENCE WITH BHSJ(2012年8月31日~9月1日)でThe Dynamics of Ethnic Minority Buusiness in Japan : The Development of the "Pachinko" Pinball Entertainment Industry'として報告する計画である。 2.エスニックマイノリティ産業としてのパチンコ産業史、の研究書を仕上げるため、これまでの執筆した内容に1の内容を統合し、全体として取りまとめる。 3.在日韓国・韓国人の代表的なビジネスである、ケミカルシューズ製造業に関連して、収集した組合資料を整理し、分析を行う。将来的には成果として論文を執筆する予定である。
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