インターネットが普及し、ロコミを参照してから購買を行う消費者が一般的になった今日において、企業にとっては悪いロコミや噂が発生してもダメージを受けない「強い」ブランドを構築することがますます重要な課題となっている。本研究はこのような問題に対して、実証的な手法を用いた研究を行い、具体的な回答を提供することを目的としている。 本研究は3年計画で実施されるが、初年度は「否定的なロコミによってダメージを受けにくい強いブランドとはどのようなものか」を明らかにするため、実際に悪いロコミを消費者に提示して、ブランドに対する態度がどのように変化するかを観察する実験を実施した。実験では、実在のブランドを4つの商品ジャンルから5つずつ、合計20種類程度取り上げ、この中からランダムに1人あたり5ブランドを割り当ててブランド態度を測定した。1回目のブランド態度測定から数週間空けた後、それらのブランドに対する悪いロコミを提示して再度ブランド態度を測定し、悪いロコミの提示前と後でブランドに対する評価がどう変化したかを分析した。その結果、消費者のブランド態度は、「機能性」、「愛着感」、「憧れ」の3次元から構成されており、中でも「愛着感」が高いブランドは、悪いロコミを見せてもブランドイメージが低下しにくいということが示された。 ブランドに対する愛着感の重要性は、従来から「ブランド・コミットメント」や「ブランド・アタッチメント」等の概念を用いて指摘されてきた。本研究は、実験という実証的手法を用いて消費者のブランド態度構造の詳細を明らかにすると共に、従来の議論の妥当性をデータによって裏付けることに成功し、ブランド研究の発展に貢献した。
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