本研究では、これまで行ってきた新自由主義体制下で新たに形成される都市周縁層の空間的隔離と社会的排除に関する研究を、1.社会集団内(米国不法移民、野宿生活者)分析から社会階層(本研究では、とくに、都市周縁層)分析へと深化させるとともに、2.都市周縁層の社会的排除から社会的処罰・犯罪化への厳罰化に関する社会政策過程に関する日米比較研究を行ってきた。 具体的には、米国と日本での継続調査をもとに、(1)社会的排除から社会的処罰・厳罰化、(2)都市周縁層の国際比較分析を行ったうえで、(3)新自由主義国家の刑罰論的転回について社会学的な国際比較実証研究を加えていく。 とくに、本年度は、ポスト新自由主義体制下における都市周縁層の社会的排除と処罰に関する国際比較研究を進めていくために、1)社会政策過程分析-新自由主義国家の社会福祉政策と刑罰政策(拙稿2010「新自由主義国家米国の刑罰化」)、2)都市空間分析-「ジェントリフィケーション」「ゲイティッド・コミュニティ」、3)労働・生活世界分析-リフレクシブ・フィールドワーク(拙稿2011「リスクと統治性-米国非正規滞在者の排除と処罰」)の三つの分析を進めてきた。言い換えるなら、(1)政策過程と国家論に関する国家・社会政策分析、(2)(都市)社会-空間分析、(3)都市周縁層の労働生活世界を抽出する質的調査メソッド(本研究では、リフレクシブ・フィールドワーク)を相互に連関させるなかで総合的な分析を行ってきた。その成果を、国内外の学会で多数報告してきた。中でも、4月にエジンバラ大学で開催された国際学会では"Advanced Marginalization and Post-Neoliberal Criminalization"について報告を行った。
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