研究概要 |
統合失調症の家族心理教育にニーズをもつ家族の参加を促進する家族関与のあり方を検討することを目的とし,平成22年度は,精神科臨床スタッフの日常実践における家族関与の実態を質的・量的調査を用いて明らかにした。 日常実践で家族と関わる場面やその際の認識を問う半構造化面接を,全国12の精神科医療機関で家族心理教育に関わっていないスタッフ23名を対象に実施した。回答を家族関与の機会,内容,困難場面,工夫の視点からKJ法を用いてカテゴリーを抽出した。抽出されたカテゴリーが表す具体的な家族関与状況を項目とする自記式調査票を作成し,全国16の精神科医療機関の全臨床スタッフを対象に実施し,1793名から回答を得た(回収率84.0%)。 家族関与の内容は,病気や対応に関する情報提供,家族の気持ちに焦点を当てた関わりが,初診時・入院時家族面接時に多く実施されていたが,定期外来受診時・面会来院時の実施程度は低かった。家族との継続的な関わりを持つための働きかけは,初診時・入院時家族面接時に実施程度が低く,定期外来受診時・面会来院時の実施程度は相対的に高かったが,他の関与内容と比べて低かった。日常実践における家族への関与内容等を質的・量的に明らかにしたことは,家族の気持ちに焦点を当てた関わりを初回コンタクト時から継続して行うための方略を検討する際の,現状ニーズを明らかにした点で意義があると考えられる。 また,全国18の精神科医療機関で家族心理教育に関わるスタッフ37名への半構造化面接より,家族心理教育の参加募集は,プログラム開始時期に合わせたアプローチ開始が多く,日常的な関わりからニーズ把握,関係作りを行い,その延長として家族心理教育へ導入する「システム全体としての家族との関係作りや個別支援」を行うために課題を有していること明らかにした。
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