研究課題/領域番号 |
22683014
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
清成 透子 青山学院大学, 社会情報学部, 准教授 (60555176)
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キーワード | 社会系心理学 / 進化心理学 / 実験社会科学 / 協力 / 社会的ジレンマ |
研究概要 |
本研究の目的は、協力関係形成維持メカニズムを探ることである。とりわけ、1、秩序維持に重要な役割を果たすとされるフリーライダーを罰する人が利益を享受する状況をネットワーク型行動実験によって検討すること、2、協力関係形成維持に重要な他者からの評判形成の仕組みを検討することの2点を中心としている。計画当初の予定では、平成23年度には固定した実験室確保などのインフラ整備を終える予定であったが、未曾有の震災の影響により、キャンパス再配置が遅れ、その結果、未だに固定の実験スペースが確保できないため、複数名をネットワークPCで接続する実験は実現できていない。この点に関しては、大学側と交渉を続けており、早急に研究インフラの整備を目指す予定である。そのため、平成23年度は、場所を移動しても実施可能な小規模の個人課題実験を中心に、本研究の2番目の目的である評判形成の仕組み解明により重点をあてて研究を進めてきた。また目的1を別の環境下で検討するための試験的な試みとして、大教室において対面式大集団実験をペーパー&ペンシル型で実施し、集団状況下における他者に対する期待を操作した上で、想定相互作用法を用いた意思決定を行わせた。大規模な人工的集団において、どのような秩序形成が人々の間で暗黙知として自生するのか、その鍵となりうる要因に着目した分析を現在は進めている。当初予定していた手法ではないものの、多人数が実在する匿名状況下で、規範が存在しない状況から、いくつかの変数を操作することを通して、実際に規範の生成と他者行動予測を行わせるという別の角度からの検討が可能となり、本研究の新たな展開へとつながる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
震災の影響もあって、キャンパス再配置が遅れており、未だに固定した実験室の確保ができないため、ネットワーク型の実験が実施ができない点、および、場所確保が不安定なため、長期的に参加者募集が継続出来ない点で計画が少し遅れている。ただし、その問題点を克服するために別の手法開発などを行っている。平成24年度中にインフラの完備ができれば、当初の目的通りの研究実施が可能となるため、この遅れは最終年度までには回復する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
実験室スペースが確保できない理由により遅れている点に関して、次年度以降も現状維持が見込まれる場合には、早急に他大学で実験を実施する可能性を探るか、あるいは、小規模個人型実験で検討可能なデザインへ実験そのものを変更し、実際にはネットワーク接続を行わずに、参加者には仮想状態でのネットワーク実験を体験してもらうなど、細部の手続きに関する計画を変更する可能性はある。ただし、いずれの場合においても、最終的な目標へ到達するために環境に応じた実験デザイン作成を目指すので、研究目的そのものの達成には支障がないと考える。
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